わらう、わらえ ページ23
そんなやり取りを繰り返してから、俺かっこわる…と内心呟きながら顔を上げると、佐原は胸元で手を握って目を伏せとった。
「…でも、実は半分くらい"私なんかが"って思う気持ちはあったよ。宮くん人気者なのに、私は地味だから」
初めて聞く、佐原の内心。初めて彼女の心内側の深くにに触れると同時に、自分を卑下する彼女に少しの憤りが生まれる。
「それでも、今の宮くんの言葉でちょっと安心した。こんな私で良ければ、これからもよろしくお願します」
照れくさそうに、控えめにはにかむ笑顔に、心做しか胸が疼いて。その笑顔を見ていられなくて、俺は目を逸らした。
「こちらこそよろしゅうや。…あと、地味も、こんな私もあらへん。佐原は佐原や」
な、と少し背を屈んで微笑むと、佐原は目を見開いてから「…うん」と嬉しそうに笑った。
(あ、やっぱり、佐原の笑顔好きなんや、俺)
無表情からこの笑顔に変わる瞬間が、どうしても好きや。出来ることなら笑顔だけ見ていたいんやけど。
「もっと笑った方がえぇよ」
そう言えばぎこちなくへにょ〜と作り笑顔をする佐原の顔に笑てしもた。
「ここの訳が分からへんのやけど」
差し出したのは英語の教科書。英語の先生は中々に厳しい(当学校比)+テスト前やから、予習せなあかんのや。それまで同じように予習に取り組んどった佐原は目を丸くしながら「どこですか?」と聞いてくる。
そんとき、此方に顔を寄せた佐原の髪の毛が揺れて──────ふわ、とシャンプーの香りが漂って、胸が詰まる。
「仮定法過去完了は、If、主語、過去形…」
佐原がなんか喋っとる。やけど、俺の頭の中は甘い香りでいっぱいやった。
「和訳は──────、宮くん?」
「聞いとる!近いわ!」
突如の声がけに、逆ギレをする俺に「ごめんなさい」と机に戻ると丁寧に教えてくれた。
「…ごっつ分かりやす!先生より分かりやすいわ。佐原が授業やった方がえぇんとちゃう?」
「えっ、何言ってるんですか。宮くん変ですよ」
その瞬間──────ほんの少しやけど、笑顔を浮かべた佐原に、手元の消しゴムが落ちかける。そんとき俺は、サムの一言を思い出しとった。
『…彼奴、笑う時あるで』
怒らせて、悲しませて、ずっと"そうやない"って思ってきた。そうや、そんな簡単なこと。能面を剥がし続けたその顔は、いつだって負の感情で。
そうやなくて、俺は、
ずっと俺は、お前の笑顔が見たかったんやな。
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あろま(プロフ) - きのこりさん» 分かりずらくてすみませんでした。ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - きのこりさん» ご指摘ありがとうございます!ここなのですが、夢主が侑が何故自分を誘うのか分からず、「普通なら治くんを誘うのでは?もしかして治くんが映画が嫌いなのかな?」と思って「治くん映画嫌いなの?(だから治くんじゃくて私を誘うの?)」という意味合いで聞いています! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
きのこり - ページ36の虫除けで、夢主が「治くん映画〜」てあったんですが、侑くんの話なので、侑くんじゃないでしょうか……。最近この話を知りました。とても楽しく読ませていただいてます。これからも頑張ってください。 (2020年4月16日 22時) (レス) id: b4f9762f22 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - アオさん» やー!本当に申し訳ないです!!確認して直しました!指摘ありがとうございます! (2020年3月14日 22時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - あの、以前私が治くん視点なのを侑くん視点と勘違いした話なのですが、夢主の呼び方が「佐原」だったので勘違いしたので、直した方がいいと思います。今更ですみません。 (2020年3月14日 22時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2020年2月19日 23時