小さな事 ページ20
ふわり、トスが上がる。
その上がったボールにいつものようにスパイクが決まる…はずやった。角名のブロックが目の前に立ちはだかり、瞬間俺は思い切り打ち込んむ。
「アウト!」
ジャッジの声を忌まわしく思いながら戻ろうとすると「調子悪いね」と悩みの張本人が声をかけてきよった。
「角名のせいや」
「ブロックしなくてどうするの」
「ちゃうわ阿呆」
ジト目で此方を見てくる角名から目を離すと「おい」とツムがズカズカ歩いてくる。
「サム、バレーする気ないならコートから出てけや」
「…あ?」
ピシ、と緊張感を含んだ空気に亀裂が走ったんを感じて、部員達が静まり返る。
「なんやて?」
「今日お前おかしいわ。バレー以外のことに気取られとるやろ」
ツムの言葉はまるっきり図星で。その通りやった。やけど、あんなに小さな事に気を取られとる自分が恥ずかしゅうて。他人に指摘されて認めるんは、もっと嫌やった。
「…ツムやってこの間ポンコツプレイやったやんか、俺の事言えるんか」
この間──────それはツムが佐原の愚痴を部活帰りに俺にぶちまけた日やった。その日のツムはトスも最悪、サーブも最悪やったんに。
「…っ、なんやと!もっぺん言ってみぃや」
ガッ、とツムが胸倉掴んで思い切り睨みつける。睨み返しながら「人の事言えんっちゅうたんや」と返すと拳が飛んできた。
「お、おい!」
「辞めや侑、治!」
珍しく声を張った北さんが止めに入る。アランくんや北さんに押さえられながら、俺はツムの頬を殴り返した。
本気の喧嘩やった、と思う。殴られた頬も、殴った拳もじんじんと痛かった。やけど、バレーは手が命。ツムも、俺も力は手加減したはずやったんに、痛くてしゃあなかった。
「違うって、どういう意味」
帰り、何故か俺を待っとった角名が問い掛ける。ガーゼ越しの頬を気にしながら「そのために待っとったんか」と歩き出す。
「今日佐原に言われたんや。一緒にご飯食べない方がえぇんとちゃうのって」
「…もしかしてそれ気にしてたの?」
「…角名の事嫌っとるから。俺が来ると角名とも一緒にいなあかんと思って、それで遠回しに言うたんや」
なんでこんなに胸がムカムカしとるんか、自分でも分からへん。やけど、距離を置かれたようで無性に嫌やった。佐原との接点が無くなってまうんが、なんやか。
「そうだったとしても、佐原はそんなこと言わないと思うけど」
「本人に聞くのが早いんじゃない?」
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あろま(プロフ) - きのこりさん» 分かりずらくてすみませんでした。ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - きのこりさん» ご指摘ありがとうございます!ここなのですが、夢主が侑が何故自分を誘うのか分からず、「普通なら治くんを誘うのでは?もしかして治くんが映画が嫌いなのかな?」と思って「治くん映画嫌いなの?(だから治くんじゃくて私を誘うの?)」という意味合いで聞いています! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
きのこり - ページ36の虫除けで、夢主が「治くん映画〜」てあったんですが、侑くんの話なので、侑くんじゃないでしょうか……。最近この話を知りました。とても楽しく読ませていただいてます。これからも頑張ってください。 (2020年4月16日 22時) (レス) id: b4f9762f22 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - アオさん» やー!本当に申し訳ないです!!確認して直しました!指摘ありがとうございます! (2020年3月14日 22時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - あの、以前私が治くん視点なのを侑くん視点と勘違いした話なのですが、夢主の呼び方が「佐原」だったので勘違いしたので、直した方がいいと思います。今更ですみません。 (2020年3月14日 22時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2020年2月19日 23時