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半泣きになりながらリビングを飛び出した鬱さんと入れ替わりで、リビングに入ってきたのはゾムさんだった。
zm「Aー！髪乾かして！」
「良いですよ。ゾムさん、私の前にどうぞ」
私がゾムさんに手招きをすると、ゾムさんは嬉しそうに私の元へとやってきた。
zm「Aに髪乾かしてもらうの、これで最後とか嫌やわぁ」
「これからは、ちゃんと自分で乾かして下さいね」と私が念押しをすると、ゾムさんは「えー…」と怪訝そうな顔をしていた。
初めてゾムさんに会った時は、警戒心の塊で睨まれたり舌打ちもされた。
なんならゾムさんにナイフで殺されかけた。本当にゾムさんに殺されるかと思ったし、物凄く怖かった。
でもそれは仲間であるコネシマさんを心配しての行動で、ゾムさんは仲間思いな人だ。
ゾムさんと和解した時に、腰を抜かしたのも今では良い思い出だ。
今ではゾムさんはまるで大型犬のようにとても人懐っこい人だ。
ゾムさんは意外にも料理上手で、いつの間にか料理担当として大活躍をしていた。
仕事で私が家に居ない日は、いつもゾムさんが作ってくれた。
もしゾムさんが料理をしてくれていなかったら、きっと私はとっくの昔に過労で倒れていただろう。
「ゾムさんにはいつも料理で助けられました、本当にありがとうございました。ゾムさんの作ってくれたご飯、いつも美味しかったです」
zm「少しでもAの力になれて良かったわぁ。俺から料理を取ってしもたら、人を殺すことしか出来ひんもん」
ゾムさんが自分の手を見つめながら、悲しそうな表情を浮かべた。
「ゾムさんの良いところ、他にも沢山ありますよ。自信持ってください」
「あと、出来れば食害は止めて貰えると嬉しいです…」と語尾に近付くにつれて、声のボリュームを小さくしながら言う。
zm「ありがとうな、A…！また皆でメシ食いたいなぁ」
皆で賑やかな食卓を囲んでご飯を食べる日は、もう二度と来ないかもしれないと思うと悲しくなった。
「ゾムさん、髪乾きましたよ」
zm「ありがとうな、A！」
「シッマにはちゃんと思ってること言っといた方がええで。俺、Aには後悔して欲しくないねん」と言って、ゾムさんは自分の部屋へ戻って行ってしまった。
どうしてゾムさんたちは、私の背中を押そうとしてくれているのだろうか。
仮にコネシマさんにこの想いを伝えたとしても、どうせ離れ離れになってしまうというのに。
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