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丸三日有る休みのうち、二日は家で過ごした。
ゴロゴロして、ごはんをお腹いっぱい食べて、家族や友人と話して、買い物をして、帰ってきたらまたゴロゴロして。
どこへ行ってもみんな歓迎してくれることは、嬉しくもあるけどやっぱりどこかくすぐったく感じてしまう。
でもやっぱりありがたいな。
都会で忙しく生きていると「やる事が無い」ってことが、こんなに良い事だなんてうっかり忘れてしまっていた。
家にいると、まるで時間が止まってしまっているように感じる。
もちろん、良い意味で。
家のあちらこちらから場所から聞こえてくる懐かしい生活音をBGMにして、見慣れた天井の模様をぼおっと眺める。
そうするとなんとなく、Aヒョンの事を思い出してしまった。
『時間いっぱいまで帰ってくるなよ、出来るだけオレに優雅な一人暮らしを満喫させてほしい』
玄関先で何となく踏ん切りがつかない空気を醸し出すメンバーに、そうやって明るく冗談交じりに追い出していた。
「いってらっしゃい」と、そう言って手を振ったヒョンのことを思い出して、自問自答を繰り返す。
おそらく、仕事が入ってるなんて多分嘘だ。
そうでも言わないと、みんな形だけでも納得してくれないしなぁ……。
ガヤガヤと小うるさい我が家は落ち着くけど、ヒョンはきっと一人じゃ広すぎるあの宿舎にいるはずだ。
誰かの話す声も、廊下を駆け抜ける足音も、玄関の扉が開く音もしない。
静まり返ったあの宿舎に一人だなんてホラーにも程がある。
僕なら耐えられない。
思い立ったように母へ相談し、奇跡的に航空機のチケットに空きを見つけてしえば迷うことはなかった。
背中を押してくれたのは他でもない母親だ。
三泊してギリギリまでこっちに残る予定は、二泊に変更した。
親戚や友人の中には名残惜しそうにしてくれた人もいるけど、説明すれば「それがいいよ」と笑ってくれる。
少しだけ早い帰宅の代わりに、手には保冷バッグを持たされた。
その中には計画を聞いてからフル稼働した母の手料理が入っている。
料理と土産話を詰めるだけをめいいっぱい詰め込んで、僕は島を飛び出した。
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せの(プロフ) - ちょんちょんささん» ありがとうございます! (2019年6月6日 10時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
ちょんちょんさ(プロフ) - このお話がとても大好きです!!続編も楽しみにしてます^ ^ (2019年6月4日 11時) (レス) id: bf015467db (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - うゆさん» ありがとうございます! (2019年6月3日 10時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
うゆ(プロフ) - 更新ありがとうございます!毎話毎話、素敵すぎて心がぎゅーっとなります( ; ; )そのままずっといっしょに幸せに暮らしてくれーーーーー( ;∀;) (2019年6月1日 15時) (レス) id: 81aa380229 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - ゆかさん» ありがとうございます! (2019年5月31日 16時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せの | 作成日時:2019年5月20日 10時