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混乱、驚き、悲しみ、恐怖心。
それから、ほんの少しの安心で。
わけがわからなくなってしまって、兄を見つめる。
あー、あー、
と、声を出してみるけど、やっぱり私の耳には届かなくて。
自分の声が、本当に思った通りに出ているのかもわからない。
兄を見てみると、私がおかしくなったと思ったのか心配しつつも怪訝な顔でこちらを見ていた。
また、兄の唇が動く。
音が、何も聞こえなかった。
“オッパ、音が聞こえない。”
きちんと声になっているのかはわからない。
兄は首を捻ったあと、また唇を動かした。
何度も話しかける兄の言葉を聞きたいのに、聞こえない。
大好きな声が聞こえない。
しばらく話し続けても反応しない妹に、兄も状況を理解したようだった。
もともと私とよく似た兄の目が歪み、信じられない、と言ったような顔をした。
私も兄も混乱してしまい、座り込んでしまった。
兄が携帯を取り出したと思うと、
【病院に行こう】
メモに文字を打って伝えてきた。
頷きつつ周りを見ると、会社の一室のようだった。
意識を失う直前、聞こえた声は兄のものだったようだ。
やめろ。
今まで聞いたことがないほど低く冷たい声で、先程は誰だかわからなかった。
夢に向かって頑張っていると思っていた妹が、周りに嘲笑われて罵声を浴びせられる姿を見た時、何を思ったのだろう。
兄に見られたと思うと、自分がどうしようもなく恥ずかしかった。
何も話さない、話しているのかわからない。
沈黙の中、時計を見ると午前6時を指していた。
いつもなら聞こえる秒針が時間を刻む音も聞こえない。
倒れる前に見た時刻は2時過ぎだったから、約4時間意識を失っていたことになるんだろう。
兄がつきっきりで見ていてくれたと思うと、忙しいのに申し訳なかった。
前にもこんなことがあったなあ、と思い返す。
私なんかより兄はもっと強かったのに。
弱音も吐かず、絶対に辛さなんて見せてこなかった。
一方的に迷惑をかけてばかりで、自分が情けなくなる。
ぽん、と、下を向いていた私の頭に兄の大きな手が乗せられる。
普段愛情表現なんて絶対にしない兄の、慰めが心に染みる。
前にもされたことがあったけど、その時は泣いてしまったんだっけ。
私が強くなったのか、はたまた涙なんてとうに枯れてしまったのか、乾燥した目は感情を出すことも許さない。
感情の行き場がなくなっていると、視界の端で扉が開いた。
どうやら迎えが来たようだった。
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千笑 - お待たせいたしました。更新を再開させていただきます。 (2023年1月9日 13時) (
レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
千笑 - いつも小説を楽しんでいただいてる皆様へ。作者の千笑です。私情により、ログインすることができなくなってしまったため、長期間更新ができないかもしれません。申し訳ありません。状況が改善した時にまたお伝えします。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
Kokuma(プロフ) - めちゃめちゃ好みです！続きが楽しみです。 (2022年12月17日 21時) (レス) id: 9eeff62ceb (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - まさかの展開すぎてびっくりしてます。続き気になります！更新頑張ってください！ (2022年12月7日 23時) (レス) @page38 id: e86bc2c528 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 前々から読ませていただいているのですが、読んでてすごく引き込まれるし、読むたびに続きが気になってしょうがなかなってしまいます！！むちゃむちゃ好きです！！いつも更新ありがとうございます‥！！ (2022年12月7日 0時) (レス) id: 6864ce5b3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千笑 | 作成日時：2022年10月31日 10時
