私も生きてたのに

拾漆 ページ17

蜘蛛の鬼と戦ってて、あぁもう俺死ぬんだ。と諦めてたら、知らない女の人が助けてくれた。
そして、伊之助と共に黒子の人に連れられると、治療をしてくれた。

薬湯が本当に苦い事。女の子も怖いよ。



「…ん？」


窓から見える、隊服を着ていない俺より歳下に見える女の子。
何時もなら駆け寄って求婚するけど、今は体を動かせないから無理だ。

何だか、影が落ちた睫毛の下から覗く緑色の目が気になった。

だが、俺に転機が。
たまたま病室の側の廊下を歩いてる。
声を掛けて話す。遠くで見たよりも、ずっと美人な娘で、口が辿々しくなる。



「え、えっと、俺は我妻善逸。君の名前は？」


「竈門、Aです」



それにしても肌も白くて綺麗だし、ふわふわした雰囲気を纏ってて癒される。音も、綺麗な音色だ。
名前もA、って、可愛いなあ。


………A？…竈門？
藤の花の家で炭治郎と話したことを思い出して、サァーと血の気が退いていく。


「次女…だったりする？」


「あ…そうですね、何故…」


「イヤァアアァアアア！！えっ、死んでる？どういうこと？炭治郎ぉおおお！！」



同姓同名で兄弟関係も同じ。この子炭治郎の妹さんじゃん。
けど、叫ぶ俺を見て「大丈夫ですか」と困惑気味に肩を触った。ちゃんと感触がある。生きてる。



「え…幽霊とかじゃないよね」


「ち、違いますよ。
…あの、我妻さんが言っている炭治郎、と言うのは…竈門炭治郎、でしょうか。」



額に痣のある、と付け足されうんうんと頷く。良かったじゃん炭治郎、Aちゃん、生きてたよ。
けど、Aちゃんの方は炭治郎の居場所が分かっても嬉しくないのか、寧ろ暗い表情になった。



「何かあったの？」


「いえ…私は、お兄ちゃんに嫌われていると、思うので…」



話を聞くと、避けられていたと言う事。炭治郎は好意故に避けていたんだろうけど。
複雑な絡み合いをほどくのは難しそうだ。



「私が此処に居ること、お兄ちゃんには言わないでください。」


「う……ん、でもさ、絶対に炭治郎はAちゃんの事、嫌ってないよ。」





「…私、鬼なんです。
禰豆子お姉ちゃんを守っているのに、私まで居たら迷惑、ですよ。」



鬼の気配の無さに驚く。本当は物凄く強い鬼なのではないかと怯えていたら、鬼の血がすごく薄いらしい。
話していると、窓から隠の人に背負われている炭治郎が来た。



「行っちゃうの？」


「はい…話せて良かったです。失礼しますね。」



少し急ぎ足で病室から出ていったAちゃん。
なあ炭治郎、炭治郎の気持ちはAちゃんに届くよ。

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