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パチパチと目が覚めれば、誰のかの膝の上で頭を撫でられていた。
欠伸を噛み締めれば、「あぁ、起きたのかい」と優しい声が降ってきた。
『...ニャ』
あの後一晩過ごし、今日は朝から天気も良く縁側で静かに日向ぼっこをしていたはずだったのだけれど。
「あぁ、気にしないでくれ。こうやって毛を撫でるのは好きでね」
なぜ、お館様の膝にいるのだろうか。
ふと彼の横に座るようにいた子と視線が合う。
黒髪の、最終選別の案内役をしていた子だと思い出した。
『ニャァ』
「その子は輝利哉、僕の後継だよ」
...男なんだ
確かに産屋敷家では、風習で十三になるまでは女の子として育てられると聞いたことがある。
あのお館様の膝の上だというのに、不覚にも気持ちがよすぎて欠伸が出てしまう。
「雲林院
雲林院巧、私の父だ。
「彼は私が幼い頃からお世話になっていた。物心ついた頃から、彼は私の屋敷に遊びに来ていたんだ」
おかしな話だよと彼は笑っている。
「覚えていないだろうけど、生まれてすぐ君の顔を見に行ったんだよ。私がまだ九つの頃だった」
親方様は私の頭を撫でる。
「Aが一歳の頃、君の母親が亡くなって、巧は柱を引退した。能力が遺伝していることに気がついていた彼は、ここから離れた山奥に引っ越した」
その話はなんとなく聞いたことがあった。
「そして今から10年前、Aが4歳の頃だったか、病だということが判明したね」
「まさか、私よりも先に病で逝かれるとは思ってもいなかったよ」とため息混じりに言った。
「そして、私の父の代から、彼が柱を引退してから、この13年間仕事を頼んでいた」
...アレか
「もう知っているだろうけど、君の父さんは頭が良くてね。参謀として動いてもらっていたんだ。十二鬼月や、異形の鬼が出た場所を照らし合わせ、統計を作っていた」
「行動や、動きを、先読みできるようにね」と続ける彼に、私は一鳴きした。
「鬼舞辻無残は、必ず動き出す。A、手伝って欲しいんだ。できるかな」
優しい声で私の喉元を撫でるお館様に私は静かに目を開けると、一鳴きした。
鬼舞辻無残、彼の首をはねることが可能であるならば、なんでも。
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人形師(プロフ) - 凄く面白いです!無限列車編書いてほしいと思いました。自分のタイミングで良いのでいつか書いてください。 (2020年3月2日 13時) (レス) id: 05191dc1a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおいろ | 作成日時:2020年2月10日 8時