４０話 ページ40
「これで挨拶は終わりね。どうかしら、あの子達と仲よくやっていけそう？」
カルトを見送ってから、キキョウが手を叩いて朗らかに言った。しかし、Aは首を傾げる。
「あの、間違いでしたら申し訳ありません。五人兄弟とお伺いしたのですが……まだ四人しかお会いしていませんよね？」
ここに嫁いで来る前に、Aはゾルディック家についてある程度調べていた。信頼のおけるネットワークから得た情報によれば、家族構成は曾祖父、祖父、祖母、父、母がいて、その下に五人の兄弟がいる。しかし、今顔を合わせたのは、ミルキ、キルア、カルトのみ。イルミを含めても四人しか見ていない。
当然の疑問で、特に咎められる筋合いのない、至って誠実な問いだ。しかしキキョウは笑顔をぴたりと凍り付かせ、かと思えばふっと表情を消した。きゅうん、とスコープが意味ありげに、そして不気味に光る。
「Aさん。
繰り返される、先ほどと全く同じ言葉。その有無を言わせぬ語気にただならぬ気配を感じ、これは触れてはならない禁忌であるのだと、Aは即座に理解した。
暗殺者に必要なものは何であろうか。気配を消す能力。確実に命を刈り取る技能。標的を調べ上げる調査能力。何があっても対応できる戦闘技術。それらも確かに大切だ。しかし、何よりも重んじるべきは、危地をいち早く認識し、それから迅速に逃れる危機察知能力である。
暗殺者は極論、一撃当てることさえできればそれで全てが終わる職である。勿論、不足の事態に備えて様々なスキルを養うのも必要不可欠とはいえ、自分の存在が露見しては暗殺者として三流以下だし、そもそも殺す前に殺されてしまっては元も子もない。
決して踏み行ってはならない領域というのが、人間にも空間にも必ず存在する。それをいかにして見抜き、避けるかによって、暗殺者の技量を最も簡単に測ることができる。
「……かしこまりました。出過ぎた発言をお許し下さい。Aはよき嫁でありたく存じます」
「いいのよ。それで、どうかしら？ 上手く付き合っていけそう？」
「皆様とても利発的なお子さんであると思います。カルト君は、時間がかかりそうですが」
この時、Aはなぜ兄弟を一気に紹介しなかったのか、その理由に思い当たった。Aが先の疑問を皆の前で発言するのは、キキョウにとって──この家にとって、芳しくないことなのだろう。
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神崎コノハ(プロフ) - 凄く好きです (2019年7月9日 23時) (
レス) id: b4ffd0544a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - 白ウサギさん» コメントありがとうございます！文が冗長になってしまう癖があるので、お褒め頂きとても嬉しいです。ご期待に添えるよう頑張ります！ (2018年12月16日 23時) (レス) id: e4f486b00d (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - はじめまして！面白くて一気読みしてしまいました。落ち着いていて、すんなりと読むことができる文章、素敵ですね。これからも頑張ってください。続きを楽しみにしています。 (2018年12月15日 13時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - アオクサさん» コメントありがとうございます！読みにくくはないかといつも不安になりながら投稿しているので、読みやすいという言葉はすごく嬉しいです。アオクサさんもイルミ落ちで書いておられるのですね！応援のお言葉に応えられるよう頑張ります！ (2018年11月14日 14時) (レス) id: e4f486b00d (このIDを非表示/違反報告)
アオクサ - コメント失礼します。ツクールではあまり見られない文体ですが、とても読みやすくスッと入ってきます！私なんかには真似できないです……。夢主さんが愛らしいです。同じイルミ落ちのツクール作品を書いている身としては一番好きです、応援しています。 (2018年11月13日 22時) (レス) id: a5e6fd18d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆづき | 作成日時：2018年8月19日 3時
