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39.卵色 ページ41

「お前ほんっとに料理できたんだな…」

俺のその言葉にAは呆れた顔で振り返った。


『えー!?まだ信じてなかったんですかぁ!?』

「信じてたけど…こう、改めて目の前で作られるとな」


そう言いながら立ち上がる。

珍しく縛られているAの髪が揺れた。


『どうかしました?』

「え?いや手伝おうかと…」

『はぁ!?バカなこと言ってないで寝てて下さい!』

「お前またバカって言ったな?」


今日2度目だぞ。

こういう状況じゃなけりゃ蹴り飛ばしてた。

睨んだら生意気にも睨み返されて、渋々布団に戻る。

ご立腹な様子のAはふんっと俺に背を向けてコンロに火をつけた。



『私まだ怒ってるんですからね!
熱出すまで寝ないだなんて、いくらなんでも働きすぎです!』

「わ、悪かったよ…」

『降谷さん昨日はちゃんとお家に帰りましたよね?
なんで寝てないんですか?』

「いや…寝たけど…」


横になりはしたのだ。昨日も一昨日も。

急に黙った俺に、Aが不思議そうにこっちを見る。

『降谷さん?』と遠慮がちな声が聞こえた。



「……寝ようとしたけど、寝れなかったんだ」

『…え?』

「昨日…幼馴染の…命日で……」


…俺はなにを話してるんだ。

こんなこと、こいつに話すようなことじゃないのに。

けれど言葉は1度零れ出したら止まらない。


『おさななじみ…?』

困惑気味にその言葉を呟いたAに頷く。


「組織に一緒に潜入してたんだ。
公安だとバレて…自決した」


俺のせいで。

とは口には出さなかった。

そこまでは、まだ言わない。

Aが息を呑む音が響く。

顔を上げれば、彼女は拳を握って、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。



「…なんでお前がそんな顔するんだよ」

『……』


Aは何も言わない。

代わりに菜箸を置き、こっちに歩み寄ってくる。

そして辛そうな表情のまま、俺のことをギュッと抱き締めた。


「…っ!?」


ど、どうしたんだこいつ。

いきなりのことに体が固まる。

そんな俺にお構いなしに、Aは更に力を強めた。




「A…?」

『……ごめんなさい』

「え?いやいいけど…」


もしかして慰めようとでもしてくれてるのだろうか。

躊躇いがちにAの背中に腕を回す。

しかし次の瞬間、Aはパッと顔を上げて俺から離れた。


『おかゆ!!焦げちゃう!!』

なんて言って慌ただしく駆けていった彼女は、すっかりいつも通りの声色だった。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時

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