検索窓
今日:40 hit、昨日:430 hit、合計:1,456,951 hit

34.水色 ページ36

「え!?な、泣い」

『泣いてません!!!』

「お、おお…?」


食い気味に言われた。

反動で涙が零れ落ちそうになるのを耐えるように、Aの眉がギュッと寄る。

え?泣いてないって、ここまで涙浮かべといて何言ってんだこいつ。



「泣いてるだろ」

『泣いてないです!!まだ涙落ちてないからセーフです!!』

「いやこれはアウトだろ」

『セーフです!!ノーカンです!!!』

「そ、そうか…」


必死すぎて頷いてしまった。

確かにまだ涙は落ちていない。

それでも急に目の前でこんなことになられたら俺だって焦る。

相手がどんな時でも笑顔だったAだから尚更だ。



「なんで泣いてるんだよ…」

『泣いてません』

「わかったから。で、どうした?」

『…………』


Aは口を真一文字に結ぶ。

…言う気はないってか。

小さく息をついて、明るい茶髪に手を伸ばす。

その頭を撫でれば、少し落ち着いていた涙がまた量を増やし、Aが唇を噛んだ。



『それ、は、ずるい、です…っ』

「あーもー、わかったよ。悪かったから。
血出るから噛むな。ほらもう見ないから」

『ううぅ…』


緩く抱き寄せて背中をさする。

体勢的に見えないから結局涙が零れたのかはわからないけど、Aが鼻をすする音が聞こえた。

続けて自分の腕の中から涙に濡れた声がした。



『人に、手料理を貰うなんて、本当に何年ぶりかわかんなくて……』

「……そうか」


じゃあ、悲しくて涙を浮かべたわけではないのか。

そのことにとりあえず安心する。



『嬉しくて泣いただけです、ごめんなさい』

「いや、謝る必要は…」

『間違えました、泣いてないんでした』

「もういいだろそれ!」


やっとAがクスリと笑った。

その笑顔のままで、顔を上げる。

思ったより距離が近くて心臓がまた変な音を立てた。


『ありがとうございます、降谷さん』

「…ああ」


眩しい笑顔に動揺する心を誤魔化すように、肩を掴んで距離をとる。

俺、この前からこいつに心揺さぶられすぎじゃないか…?

どんだけ惚れてるんだよ。

泣くの堪えてる顔でさえ可愛いと感じてしまったし。

ため息を漏らした俺を気にせず、Aは嬉しそうに弁当箱を掲げる。



『このまま持って帰って家宝にします!!』

「やめろ食べろ腐るだろ」

『食べたら消えちゃうじゃないですか!』

「わかったから!また作るから!」

『え!?ほんとですか!?』


…うん、やっぱりこいつにはこっちが似合う。

35.長春色→←33.胡桃色



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (983 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2782人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。