王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ30)

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勝利の女神ページ30

お姫様が、タンカを切って王様から売られた喧嘩を買ってから、はや数週間。

俺たちの使用する衣装はほぼ完成と言っていいほどまで出来上がっていた。

目の前で黙々と作業する、お姫様とはまた別のこいつに、俺は声をかける。

「あんたはどう思ってんの、今回のこと。あら方、Aからは聞いてるんでしょ？」

ピクっと肩を揺らし顔を上げたそいつは、コクと頷き消え入りそうな声を発した。

「はい、お姫様から話は聞いています。どうやらストレスも溜まってきてるみたいで、最近は忙しくてろくに体調管理も出来ていないようです…。」

喋りながらチクチクと布を縫い合わせていくこいつは、ゆうくんと同じクラスの転校生。

名前は確かあんず、俺たちのお姫様と同じ女子で、周りからは勝利の女神と呼ばれているらしい。

そこにあやかって、今回のジャッジメントで使用するKnightsの衣装を作ってもらっていた。

「それで…今回の件について、お姫様に大きな負担をかけるものだと思って…お小言になってしまうんですけど、忠告はしておいたんです…。そしたらお姫様、すっごい満面の笑みで"大丈夫、女神様が心配するようなことは何もないよ！あたしに任せて〜♪"と…。だから、その先は何も言えなくなってしまって…」

衣装を作る手を止めてあんずは俯いてしまった。
こいつもこいつなりに、Aのことを心配してくれてるのはよーく分かった。

俺も返す言葉が無くて、ただ沈黙が流れていた部屋に気だるげだけど楽しそうな、チョ～うざぁい奴の声が響く。

「おぃ〜っす♪へぇ、もう完成しそうじゃん。これ、俺の？」

4つの衣装掛けにそれぞれ掛けられた中のひとつをマジマジと見つめるくまくんに、あんずは頷く。

特にそれぞれ違った特徴はない…と思うけど、一つだけマントの長い衣装が掛けられている。Knightsの末っ子、かさくんの衣装だった。

相手は予測不能な王様。
何をしかけてくるかもわからないし、そーゆー所ではあいつには勝てない。

せめてもの抵抗として、虚しく散るか、それとも大輪の華を咲かせるかは、かさくん次第だけど、あいつを今回のジャッジメントでの、Knightsの王とした。

提案はそれぞれの衣装を見つめるくまくんから。

主役はかさくんっていう意表を突く事以外に俺たちのお姫様も策に練り込まれている。

ただ、Aの口から提案されたものは、最初俺たち全員否定したんだけどねぇ？
はぁ、強情すぎ。チョ～うざぁい！！