王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ21)

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成長したお姫様ページ21

『い、い、いやァァァァァァァァ！？』

「ちょっと！？煩いんだけどぉ！？口開けてたら舌噛むよォ！？嘘だけどねぇ！？」

『無理ぃぃぃぃぃぃぃぃ！！！！』

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2-Bに着く頃には、あたしは意気消沈。乱れた髪と乱れた制服。

決してやましいことをされた訳では無い。
ただ、朝、大通りを通学中にたまたま泉さんが通りかかり、そこからセナバイクで学院まで送ってもらっただけ。

「ふぅん？朝からセッちゃんのバイクで来たけど、なんせ初体験だったから疲れたんだねぇ…？よぉしよし、A。俺が癒してあげる〜…♪」

『うん、嬉しいんだけど言い方が好ましくないあたしの騎士…。あと重い。』

机につっ伏すあたしに覆い被さる凛月くんは、重いなんて失礼な…えいっえいっ♪と、さらに体重を掛けてくる。

「とうとうAちゃん、"あたしの騎士"なんて言うようになったのねぇ♪お姉ちゃん、お姫様の成長を見れて嬉しいわぁ♪」

涙ぐんでいるけど、良い勢いで凛月くんをベリ！と引き剥がす。
顔と言動があっていないのよね…。

"お姫様の成長"なんて。
1度ライブに出たまだ駆け出しさんなのにね。

サマーライブとプリンセスライブ。
あの日、たくさんの歓声でお出迎えされて、たくさんの歓声で幕を下ろしたあのライブ。

あたしはまだ余韻に浸っていて、昨日も眠れなくて、今日はこのザマ。
そこにのしかかったセナバイク。

『プリンセスライブ…楽しかったなぁ…』

小さく呟けば、嵐ちゃんはお眠なのかしら？と顔を覗き込んでくる。

初めての感覚。

今まで、自分で自分の世界をつくりあげ連ねてきた音符たちとは全く別物の感覚。

自分の世界とみんなの世界が合わさって、そこに虹色の音符が並べられるあの感覚。

溺れてしまうんじゃないかと言うくらいで、あの時のあたしたちの"お姫様"の笑顔は本当に忘れられない。

舞台裏に戻る瞬間聞こえた、「私たちの騎士様！私たちのお姫様！また会えるのを待ってるね！」

みんなが声を揃えて言ったの…？って思うくらいはっきり聞こえた皆の声はあたしを泣かすには充分すぎた。

認めてくれた、Knightsに居てもいいんだよって。

だからこそ、余韻に浸り抜け出せない沼に居る。

何度聴いただろうこのHRが始まることを知らせるチャイム。

担任が入ってきたところを見計らって、神無月A、体調不良につき午前中疾走しマース、と言い残して教室を出た。

行く先はお昼寝に最適な場所。