【短編集】懐中時計のダーツ盤【あんスタ】 (ページ10)

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「……ふぅん、綺麗な子だったね。それにしても変なことも起きるもんだねぇ、王様が女の子に興味を持つなんて。しかも相手は隣の国の王女様なんてね」
「……」
「……まぁ、いまはいいよ。せいぜい顔だけじゃなくて自分も取り戻しなよぉ、そんな今みたいにいっつもへらへらしてないでさぁ」

「あんたの目が蛙みたいになった時は本当に焦ったんだからねぇ、ああ、唯一の取り柄が消えちゃったって。……ちょっとぉ、話聞いてんの？返事くらいはしなよねぇ……って、王さま、その手はなに？」
「……」
「はぁ、そういうの、俺は好きじゃないんだけど……ていうかもうとっくに魔法なんて解けてたんだねぇ、王様。」
「ん～、何でそう思ったワケ？」
「あのカエルみたいだったときの甘ったれた脳じゃそんなことにはなんないでしょ。見返りを求めるって時点で、アンタが戻ってきたんだってこと気付くべきだった。ムカつくけど、その点じゃ俺もまだまだだね。」

「ねぇ、うるさいんだけど……おや、暴君のお帰りだね～？」
王の帰還を今の今まで待ち望んでいたように、それに嬉々として応えた騎士に起されたように、城の奥の吸血鬼が静かに笑った。

*

「……私の婚約者候補が一人減ったの」
「さぁ、馬にでも跨がれてるんじゃないか？な～んてな！わははは！」

綺麗な顔をした隣の国のお強い王様。私のお父さまは彼が大層気に入ったらしく、私の婚約者候補の上から二番目に彼を位置付けた。別にその一番上にいた人のことが好きだった訳ではないけど、こう、目の前の彼にとって都合の良いことばかりだとどうも不安になってくる。

「何かした？」
「それを考えるのが楽しいんだろ、ほら、思考を止めないで！」

彼の赤くなった白手袋がそれを物語っている。