【短編集】懐中時計のダーツ盤【あんスタ】 (ページ17)

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この庭は広い。それに、背の高い緑達のお陰で、全体を見通す事も出来ない。だから、只でさえ小柄な少女を見つける、というのは至難の業であるが、私はアリスの行方を知っているから、というのも、ただ落ちた場所を知っているだけなんだけど、何も知らない他の参加者達よりは断然有利だ。探す必要は無いから。
……しかし、有利な筈の私は、この衣更くんによって、行方を知っているにも関わらず他の参加者達となんら変わりない1人という存在になっている。確実に私が手を引いた方がよっぽどいいのに、立場は逆。衣更くんが主導権を握っている。その手を振りほどく事も出来ない私は、せめて情報を伝えるでもすればいいのだろうけど、当の本人は聞く気は無いようだった。

「なぁ、今日は何する予定なんだ？」

何って、アリスの婚約パーティーなのだから、それの祝福をする予定に決まっている。だけれど、アリスという主役がいなくなってしまったから、こうして私達は駆り出されている訳で、全く、たまったもんじゃないけれど、確かに、主役がいなければ本当に意味の無い催しだから、仕方がないのだろう。それにしても、このまま衣更くんとアリスを探していても、絶対に見つからない。だから、その事をこの人に伝える必要があるのだが、きっと、それを言ったってまた無かった事にされるんだろうなぁと思った。だから、もう諦めて、気が済むまで付き合ってやる事にする。

「婚約の祝福。ねぇ衣更くん、何処まで行くの？」

私がそう訊けば、衣更くんは、何処まで行くんだろうな、アリスが見つかるまでか、それとも、地の果てまで行っちゃうか？とか割と本気なトーンで言ったものだから、いくら気が済むまでとは思ったものの、あぁ、何か変な汗が出てきた。それは何としてでもやめさせよう。たまったもんじゃない、早いとこ考え直させないと。

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