【短編集】懐中時計のダーツ盤【あんスタ】 (ページ16)

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導く者の役目ページ16

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アリスが消えた。

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「衣更くん、待ってこっちじゃないよ」

今日はアリスが主役のパーティーで、舞台は此処、緑生い茂る白い花が綺麗に咲く庭園。そこにアリスの友人である私は招待された。それはこの衣更くんも同じようで、今は私の手を取り引っ張っているけれど、先程までは、一緒に楽しくお喋りをしていたのだ。

「大丈夫だって、何かこっちな気がするから！」

「それ気がするだけだって！」

そんな私の声を笑って飛ばして、構わずズンズン庭の奥へと進んでいく。事は少し前、何処かの偉いおじさまにアリスを探してほしいとお願いをされて、とりあえず2人でこの無駄に広い庭園を探索する事になったんだ。といっても、私は声をかけられる少し前、今はいない消えたアリスをこの目でしっかりと見ていた。白いウサギを追ってそのまま穴へ落ちてしまったアリスを、何処かぼんやりした目で、ただ、見ていた。
まるで、白ウサギに導かれたようにそこへ入っていったものだから、何だかこれが当然の事のような気がして、なぜそう思ったかは分からないけど、そのまま放置してのこのこと陽の当たるガーデンスペースに戻ってきてしまったのだけれど、帰ってみるとアリスがいない、主役が消えたと騒いでいる参加者達の声が、二酸化炭素を吸収してくれる葉の存在を忘れたかのようにそこで飛び交っていた。

『……仕方ねぇから、まずはあっちから片っ端に探していこうぜ。ほら、主役がいないパーティーなんて無意味だろっいくぞ！』

そうして私は手を引かれ、アリスが落ちた穴の逆方向へ行くことになってしまった。衣更くんと探し始めてから数分、私の声を無視してあらぬ方向へと進んでいくこの人に、少し呆れながらアリスの行方を教えようと、何度も口を開くも、それは全て無意味な行動に終わった。

「……それにしても、なかなか見つかんねぇな、アリス」

そりゃあ、こんな逆方向へ進んでいたら、見つかるはずもないだろう。