人工物、あるいは人ならざる者 (ページ15)

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外伝1 ページ15

ジェベリアはソファに座り、右の大きな窓から外を眺めていた。明るい満月の光が彼女の顔を照らす。

　今日という日が何か特別だったというわけではない。ただその日は月が明るかった。そして、よく晴れていた。ジェベリアは何か思う事もなく、ぼんやりと月を見ていた。

　気付けば、ジェベリアから見て左のソファ、窓を向く大きなソファにはジョンが座っていた。私に声もかけずに？ジェベリアはそう思ったが、そんな事はない。あまりにぼんやりしていたせいで、声をかけられたのに気付かなかったのである。

　ジェベリアは何も言わずジョンのすぐ隣に座る。夫にその身を預けて、そのまま月を見つめる。独特な香り、愛するものに包まれるような、心地の良い感覚に、酩酊する。先ほどまであったわずかな苛立ちも消える。あるべき場所にあるべきものがあるその時のような、満たされるような。まあ、悪くないわね。許してあげる。ジェベリアはふわふわとした心地でそう思う。

「月が綺麗だねぇ」

　ふとジョンが囁いた。それは一人言のようでもあり、ジェベリアへ向けた言葉のようでもあった。

「私の方がもっと綺麗よ」

　ジェベリアはそれだけ返した。穏やかな心地のまま、まぶたは重くなる。ジョンに抱き抱えられ、ベッドへ向かう。今日は良い夢を見られるかもしれない。

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