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上段は甘酸っぱいミックスベリーソースとストロベリー味のクリームを挟んだピンクのマカロンが二つに、小さめのクッキーとラングドシャ、そして角切りの洋梨がたっぷりと乗った口溶けの良い柔らかなキャラメルのムースが載せられたスイーツの皿。
下段はハーブチキンを新鮮なトマトとレタスと共に挟んだものとクリームチーズとスモークサーモンを挟んだものという二種類のサンドイッチと、ふっくらさくさくのスコーンにストロベリージャムとクロテッドクリームの載せられた皿だった。メイドがてきぱきと二種類目の紅茶の用意をし、カップに注いでいる。漂ってくる香りからして、選んだものはアッサムであろう。
「東区にも同じことを言っているのではなくて?」
「とんでもない!フォビア様に誓って、そのような小賢しい真似など致しませんよ。」
「……ええ、そうでしたわね。貴方はそういうお方ですもの。」
芝居がかったゼーゲンの身振り手振りに、ルースはやれやれ、というような仕草をし溜め息をついた。彼の役者のようなおどけた口調にルースの渋く固い表情がほんの一瞬崩れたが、一秒も経たずして元の顰めっ面に戻る。
「それにしても、何故こちらと同盟を?わたくしたちの誇れるもので、貴方の欲するようなものは医術くらいしかないでしょうに。」
「あの薔薇の女帝と手を組んだところで、いずれ裏切られるのは目に見えています。あなたはきっと、そんなことをするような人間ではない。それに……」
ゼーゲンがわざとらしく台詞を切る。そして、ほぅ……と悩ましげな溜め息を一つつく。まるで今まで恋を知らずに生きて来た役者が、美しい乙女に恋をして彼女の一挙手一投足に見惚れているかのような彼の仕草にルースの目が僅かに見開かれた。
「何より私は、この素晴らしき統治者による美しい西区が、ミュータントに蹂躙されるのが嫌なのです。西区も東区相手に勝算があるからこそ宣戦布告をしたというのは理解しています。しかしそれでも……私ごときが言っていいのかはわかりませんが、どうしようもなく不安なんです。」
彼は窓の外に視線を向けた。
「私が生まれた頃から、地下都市は腐敗していました。それでもあなたと、あなたの治めるこの地域は美しい。私は……ルースさん、あなたのことを好いているのかもしれません。南区と協力するのはあなたの流儀に反するというならば、断ってくださっても構いません。ですが……私自身は、何があろうとあなたの味方となりましょう。」
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ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年12月16日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましーた (2019年12月16日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しまっす (2019年12月16日 21時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年12月10日 22時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
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