第95話 ページ6
それから退院までの流れは短いようですごく長かった
普通病棟の個室に移され、立ち歩きのリハビリ、食事の練習
やっと喋れるようになってきたから、突っかからずに喋られるようにお遊び感覚の早口言葉
先生達が放課後の時間になるとわざわざ来てくれて、勉強を教えてくれたり
まだまだ支えなしでは歩けないけど、それでもかなり成長した
ご飯も、今まで飲み下すだけだったのがほんの少しだけ咀嚼することができるようになった
普通のお喋りなら、多分みんなとそう変わらない
勉強も、頑張ったおかげか小テストは満点を取ることができた
そ「A、帰ろう」
『お兄ちゃん、お兄ちゃん……っ!』
そ「どうしたの、俺はここにいるから」
『おにいちゃん………やっと、かえれる……っ、?』
そ「うん、帰れるよ、Aが頑張ったから、今日からまたお家でゆっくり暮らせる」
『お、っにいちゃ………おにい、っちゃん……おにいちゃ、ぁん……!!』
そ「A、Aっ……よく頑張ったな、っ………つらかったのに、よく…耐えたな……、もう帰れるんだよ、…よかった………本当に、よかった……!」
病室のベッドの上
つい昨日会ったばかりなのにまるで久々会ったみたいで、ぽろぽろと涙がとめどなく溢れてしまう
お兄ちゃんも私も、お互いの肩を濡らしながらぎゅっと強く抱きしめる
一頻り泣いたあと、お兄ちゃんは私のおでこに優しくキスを落とした
そ「A、これからまた頑張ろう、Aがしたいこと、俺は何でもさせてあげるつもりでいる、旅行に行きたいなら一緒に行こう、いい大学に行きたいなら行かしてやる、もちろん勉強はちゃんとやれよ?
もう二度と、Aに寂しい思いも、苦しい思いもさせない、だから、これからもずっと
お前の“お兄ちゃん”として、すぐ横でお前の成長を見守らせてほしい」
ダメか?とお兄ちゃんがしなさそうな、不安げな声で聞いてくる
私は、お兄ちゃんがお兄ちゃんでいてくれることが何よりも嬉しいから
『お兄ちゃん、お兄ちゃんはずっと私だけのお兄ちゃんだよ、ずっとずっと、大好きなお兄ちゃんだよ』
そ「…A、ありがとう………っ」
『………ねえ、お兄ちゃん』
そ「ん?なに、どうしたの?」
『私ね、歌いたい、お兄ちゃんと一緒に歌いたい』
驚いたような顔で私を見つめるお兄ちゃん
だけどそんな顔は一瞬で
すぐにいつもの優しい顔で微笑んだ
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狐。(プロフ) - これやばいです…後半泣きましたもん…初めて小説で泣きました…。もうこれずっと読み続けます!!頑張ってください! (2019年7月28日 1時) (レス) id: ebf3b91b93 (このIDを非表示/違反報告)
空夜(そらよ)(プロフ) - ひよさん» コメントありがとうございます!このお話で涙してくれるなんて…本当にありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2019年4月24日 17時) (レス) id: 5a4020227a (このIDを非表示/違反報告)
ひよ - コメント失礼します めちゃくちゃ感動もんじゃないですかこれ…目覚めたシーン涙止まらないです…ほんとに…もうすきです…初めて小説で泣きました…ほんとにこれすきですありがとうございます(;_;) (2019年4月22日 0時) (レス) id: cb70b4fbad (このIDを非表示/違反報告)
空夜(そらよ)(プロフ) - まっちゃらてさん» コメントありがとうございます!これからも読んでいただけるように頑張らせていただきますね!(誤字すみません!今訂正させていただきました!) (2019年3月12日 12時) (レス) id: 5a4020227a (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃらて - やばいです…なんかやばいです…このお話ずっと読みます。(93話 そらるさんのセリフで、「ごまだ」になってます。多分ですが「ごめんまだ」でしょうか?) (2019年3月10日 19時) (レス) id: 2fd4d4aade (このIDを非表示/違反報告)
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