私は邪魔者だけど【歌い手】

第94話 ページ5

〜そらるside〜

落ち着いていたはずの動きが次第にまた大きな動きへと変えていく

息を荒げ布団を握りしめ苦しそうに眉根を寄せている

今ここにいるメンバーは坂田、luz、天月、まふまふ、俺の5人

Aと顔を合わせたことがあるのはあと4人


ま「僕が呼びましょうか？」

そ「……ごめん」

ま「全く…そらるさんはこういう大事な時に限って臆病者なんですから」

そ「ほんと……ごめん」

ま「いいですよ、慣れっこです」


まふまふが電話をかけにいった直後

薬の効果が切れた

びく、と大きく痙攣したあとガタガタと震え、泣き叫ぶような声が響く


そ「っ…A！！A！！！」


坂田が急いで部屋に入り応急処置の準備を、luzが先生を、天月がまふまふを呼びに行く

俺はただ部屋の前でA、と名前を叫ぶことしかできない


そ「Aっ……」


祈るような気持ちで名前を呟く

何もしてやれない

こんな時に、妹が…Aが大変な目にあってるのに

ダメだ、今は自己嫌悪なんかしてる暇はないのに

俺がちゃんとしてやれないばっかりに、こんな目に合わせてしまった


「そらるさん！！そらるさん目を覚まして！！！」


パチン

乾いた音が響く

ついこないだも叩かれたばかりなのに、また俺は叩かれたのか

叩かれた頬をさすりながら顔を上げる

いつのまにか俺の目の前に立っていたらしい彼は、俺と目線を合わせるように少しかがんで話しかけた


ま「そらるさん、僕なんか押しのけて早くAちゃんを見てあげてください、今あなたの視界に入っていいのは僕でも他の誰でもない、あなたの妹のAちゃんだけなんですよ」


そう言われた瞬間まふまふにありがとうも言わずに押しのける

応急処置が済んだのであろう、俺に入室の許可が下りた

小さな体がより小さなものに見える

そっとAの手を取り、優しく握りしめた

あんなにも暖かかった手が今はこんなにも冷たくなってしまったなんて

Aの手に雫が落ちる

ぽろぽろと止めどなく落ち続ける

医者も看護師も、そんな俺を咎めることはなかった

遠くからドタドタと4つの足音が響く

ゆるくカーブのかかった長い睫毛が、小さく揺れた





.







.




そ「………A……兄ちゃん、もう待ちくたびれたんだけど？」





溢れる涙を見ないふりして問いかける





『……おはよう、待たせてごめんね…お兄ちゃん』

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