第三十五話 ページ37
.
「翔陽コッチ！！」
田中さんのお姉さんが日向を呼ぶ。
「初めまして小さな巨人！！おれ日向翔陽です！！昔テレビで巨人さん見てバレー始めました！！」
日向が一直線に向かっていった人物
「巨人さんは今どこのチームですか！？大学？Vリーグですか！？調べても聞いてもわかんなくて」
興奮してる日向を尻目にその人物をよく見ても、やっぱり知らない人だった。
「俺もうバレーやってないんだ」
「えっ」
やっぱりな、道理で俺が知らないわけだ。
それよりアップだ、と思って日向を呼ぼうとした時、聞こえた忘れもしない声
「やっほ、飛雄」
ﾄﾞｸﾝ
名前を呼ばれて高鳴った心臓
「Aさん…なんで、」
振り向くとそこには、いつかまた会いたいと思っていたその人
「飛雄たちがあまりにもいい試合をするから来ちゃった」
そう言って笑ったAさん
「ずっと試合見てたけど、やっぱり飛雄は上手いね」
「あ、あざス」
もし会えたら聞けばいいと思っていたあの質問は、いざその場面になると勇気のいるものだと知った。
なかなか口から出ようとしない。
「…すごく、かっこよかった！」
恥ずかしそうに笑ったその人の笑顔を見て、
ﾄﾞｸﾝ
また大きく高鳴った心臓
ああ、そうか。
なぜ正月に見たあの光景がずっと気になっていたのか。
どうして牛島さんが彼氏なのかどうかが気になっていたのか。
その感情の正体
生まれて初めてのその感覚
俺、この人が好きなのか。
「次の試合も、頑張ってね。応援してる」
「…俺、頑張ります。だから絶対最後までしっかり俺のプレー見ていてください。」
「？うん！」
「おいもう行くぞ」
あの質問は、今聞くべきじゃないと思った。
春高が終わったら聞こう。
今、この瞬間、Aさんは烏野を、俺を見ている。
牛島さんは関係ない。
そう思うと、なんだか力がみなぎるような気がした。
「何でだろ、おれ、あんまがっかりしてない」
そう言った日向の目は、今まで見てきた頼りなさは微塵もなくて。
「やっとかよ」
コイツも大丈夫だと分かった。
.
---
「てかAさんいなかった？！！」
「は？なんでお前がAさん知ってんだよ」
「めちゃくちゃ美人だよなー！！」
「(コイツ…)」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にゃん吉 | 作成日時：2020年1月21日 23時
