第一話 ページ2
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「さむいなぁ…」
そろそろ11月にさしかかる。
日本の四季でいえば秋か冬か、微妙なところ。
でも、ここ宮城では十分に寒い時期だ。
「ひと多い…」
人のざわめきが徐々に大きくなってきたのでダッフルコートにうずめていた顔を上げてみると、大きな体育館がすぐそこにあった。
10月27日
仙台市体育館
そう、今日は全日本バレーボール高等学校選手権大会
通称・春の高校バレーの宮城代表決定戦の決勝戦の日
「きっと、今日もストレート勝ちだろうなぁ…」
決勝に勝ち上がった高校は、王者・白鳥沢学園と
堕ちた強豪・飛べない烏と言われていた烏野高校
「A」
客席に向かおうと階段を上がろうとした時、声をかけられた。
視界に入るのは大きな大きな身体。
後ろにはぞろぞろアリーナに向かう紫と白のユニフォームがちらちらと見えた。
「あ、としくん」
声をかけてきたのは、私の幼なじみ。
「今日の調子はどう?」
「いつもと変わらない。今日も勝つだけだ。」
超高校級エース、通称・ウシワカ
牛島若利
「まぁた、相変わらずだね…今日も頑張ってね!」
「ああ、ありがとう。」
いつも通り自信満々な返答に苦笑いしながら、また階段を上がろうとした。
「相手にコンクリート出身の面白い奴らがいる。楽しみにしておけ。」
「コンクリート??」
そう言い残して、としくんはアリーナの方に行ってしまった。
「あんな顔、いつぶりだろう…」
としくんの顔は、いつになくワクワクがにじみ出ていた。
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作者名:にゃん吉 | 作成日時:2020年1月21日 23時