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『緑川Aです。日本語、お上手ですね。』
ありがとうと彼は言い、ふと考えるような仕草をしてみせた。
「もしかして、お嬢さんは杯戸中央病院の医院長の」
思わず肩を竦めた。どうやら彼もまた父親のことを知っていたらしい。
「そうか。彼とは古い付き合いでね。久しぶりに会うんだが、まさかあれ程大きな病院の長にまでなっていたとは」
驚いた、と言う彼に苦笑することしかできなかった。
「−−−ところで、ジェイムズさんはどうして日本に?在日じゃないだろ。」
快斗君が話しを遮るように話題を変えてくれた。
「あぁ、アニマルショーを観に来たんだ。レオンのストラップが欲しくてね。」
レオンとは、快斗君が話してくれた白いライオンの名前らしい。失くしてしまったのが残念だ、と言う彼に快斗君は笑った。それならあるぜ、と。
彼は、ワン、ツー、スリーと言って指を鳴らせば、ポンと軽やかな音と共にジェイムズさんの両膝にストラップが現れた。
「I can’t believe it!貰っても良いのかね?」
「どうぞ。わざわざイギリスから来国してくれた記念に。」
「……ほう?私がイギリス人だと。」
「いや、だってさっきの英語。発音がイギリス訛りだったじゃねぇか。」
「そうか。日本に来て指摘されたのは、君で二度目だな。」
へぇ、と快斗君は興味がなさそうな声を上げる。それから、顎でジェイムズさんの手元のストラップを指し示した。
「けど、そのストラップって全世界共通だろ?わざわざ日本に来なくとも…」
「ノンノン!」
彼はそう言って、ストラップを裏返した。
『メイド・イン・ジャパン?』
「これが書いてあるストラップは、日本だけ。私は一座が周った全ての国のストラップを集めていてね。どうしても欲しかった。」
ジェイムズさんがそう言えば、快斗君はあ、そう...と呆れたように笑った。助手席に身を乗り出すようにジェイムズさんは快斗君をしげしげと見遣る。
「−−−しかし、君のマジックは見事だった。君の名前は......」
「−−−俺?俺は黒羽快斗だけど。」
「−−−彼は、世界的マジシャンとして名高い黒羽盗一氏の息子さんですよ。」
いや、だからなんでアンタが知ってんの?怖ぇーよ!と快斗君は秀一さんに怒鳴りつけ、一方の秀一さんは秀一さんでくつくつ笑っている。私の隣ではジェイムズさんが、ほう....と考え深気に目を細めていたのがとても印象的だった。
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