黄金の館 ページ1
『ーーーっ!』
周囲が騒音で酷く耳障りだ。突如として浮かんだ意識に瞳を開ければ、私の頭は硬い肩に乗せられていた。頭がズキズキと痛む中で横を向けば毛利さんの横顔が見える。慌てて身体を起こせば、ふわりと目眩がして上半身のバランスが僅かに崩れた。
「ーーーあ、おい!」
毛利さんに横から身体を支えられて、混乱しながらも彼に謝罪をする。
『ーーーここは、』
「僕が呼んだヘリの中ですよ、Aさん。しかし、良かった。貴女だけ中々目を覚まさないから少し心配だったんだ。」
白馬さんだ。ワトソンに彼が預けた手紙を....実は崖下で待機していたばあやさんに届けてもらうことで、警察に救助を要請することができたらしい。
『.........目を覚まさない?』
「A姉ちゃん、覚えてない?大上さんの対応をしている時に突然寝ちゃったんだよ。」
コナン君の言葉に息を呑んだ。
『それでっ、大上さんは?』
「−−−安心して。先にヘリで病院に搬送してもらったから。ヘリに乗っていたお医者さんの話しでは、今の所、状態が安定してるから恐らく命は大丈夫だろうって。」
『そう、それなら良かった。......ごめんなさい....私、いつの間に.......』
「仕方ないよ。僕達、ずっとA姉ちゃんに大上さんのこと任せっきりで休んでなかったでしょ。きっと疲れてたんだよ。」
コナン君の言葉に納得がいかないながらも、深く溜息をつくことで落ち着こうとした。
「ーーーお嬢ちゃんが落ち込むことはないさ。」
声をかけてくれたのは、私の左隣に座っていた千間さんだった。
それから、彼女は全てを話してくれた。
招待状の主は千間さんと大上さんが仕組んだことであるということを。千間さんは自身の父親が命懸けで遺した屋敷の暗号を、自身がまだ元気なうちに解いてもらいたかったのだと。
ところが、千間さんと組んでいた大上さんは彼の多額の借金を精算することに囚われていた。隠された財宝を独り占めしようとしていたのだろう、少しでも財宝の在り処が分かった時には招いたゲスト全てを皆殺しにする予定だったらしい。それぞれの個室の枕元に置かれた拳銃を互いに使わせることによる仲間割れ、カップの取っ手口に仕込んだシアンを服させることによる中毒死、といった数種類の殺害パターンを組み合わせることによって。
そのことを察していた千間さんは何とか阻止しようと決意し、大上さんを手にかけることにしたということだった。
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