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「Aちゃん!」
なんて予想していたらその通りだった。
ぴょんと髪の毛を揺らしながら現れた仁花ちゃんは私を見つけてぱっと笑顔を浮かべて、「みなさーん!Aちゃん来ましたー!」と奥に向かって声を張り上げる。
「皆で待ってたんだよ!新山女子はご飯まだだったの?」
「うん、まだだよ。」
というのは嘘で、さっき部で支給されたお弁当を食べたところだ。
でも、自主練のために量を控えめにしていたのが功を奏してまだまだ食べられる。
私の返事に仁花ちゃんは「よかった!」といいながら私を案内してくれた。
足を進める度に、皆の声がどんどん近づいてきて──
「お!来たなA!」
「待ってたぞー!飯だ飯ー!!」
1つの大きなテーブルにたくさんの料理。それを所狭しと烏野の皆が囲んでいた。そこに日向くんはいなくて、体調不良の選手はやっぱり彼だったんだと改めて思う。
でも、私を迎えてくれた皆の表情を見て、今度こそ肩の力が抜けた。
負けてしまった。このチームでの最後の試合を終えてしまった。けど、その事実をもう受け止め終わっていて、前に進んでいる。それをしっかり感じ取ることが出来た。
「お待たせしてしまってごめんなさいっ」
たった1ヶ月と少しなのに、烏野の皆に囲まれるのがとても懐かしくて、思わず笑顔になる。
促されるがままに清水先輩の横に座ると、その反対側に仁花ちゃんが座り、ふと顔を上げると目の前は飛雄くんだった。
これで、全員が席に着いた。
それを確認した武田先生が、それじゃあ、と手を合わせ、皆もあとに続く。
「いただきます!」
挨拶をした次の瞬間、すごい勢いでおかずが消えていく。
ここ最近この光景を見ていなかったから驚いてしまったけど、でも、変わっていなくてとても安心した。
「自分の分だけでも別のお皿に確保しておきな。
なくなっちゃうから。」
「あははっ、はい!」
清水先輩に言われて、確かにそうだと思いながらおかずに手を伸ばした。
改めて思う。今の私は、烏野の皆がマネージャーとして迎えてくれたからこそいる。
皆のためになればと心から思って動いていたけど、自由奔放なマネージャーだったから、迷惑をかけたこともあったと思う。
それでも烏野はそんな私を受け入れてくれたし、私の成長も後押ししてくれた。
でも、もうこのメンバーでこうして過ごすことはなくなってしまうのか。
そう思うと心臓がきゅっとなって、じわりと目頭が熱く……
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しおり(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!ネタ考えます🤔 (2022年11月30日 8時) (レス) id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - マジで面白いです!いつも楽しみの更新待ってます (2022年11月27日 20時) (レス) id: e34fa82e55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しおり | 作者ホームページ:http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時:2022年10月10日 21時