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今日自由時間になってから……否、自由時間でなくても学べることは山のようにある。
私は今、そんな恵まれた環境に居るからだ。とにかく、課題解決のために出来ることを思いつく限り思い浮かべた。
「Aちゃんは泣くほどバレー、下手じゃないよ。」
「ホントホント。」
そんな私に、先輩たちはそう言って小さく笑う。
「でも、間違いなくもっと上に行ける。
Aちゃんのがむしゃらな気持ち聞いたら、先輩としてやるべきこと、わかった気がするよ。」
ありがとう。今までごめんね。と叶歌先輩は言う。多分、私が教えて欲しいとお願いした時に謙遜していたことを謝っているのだと思った。
そして、叶歌先輩はこれからきっと全力で指導してくれるのだろうということも、わかった。それが、とてもとても嬉しくて。
「っ、ありがとうございます!」
「まー、確かにさっきの試合はめちゃくちゃ熱かったけどな!」
「気持ちわかるよ。私もすごく感化されたもん。」
勢いよく頭を下げる私に、2人はカラカラと笑いながら体育館の外へと足を進めた。
私も2人を追ってその場から離れる。
─俺は絶対に世界に行く。だから、お前も世界に来い。
もっともっと上に行かなきゃ。そう決意した脳裏に、飛雄くんから言われたことを思い出した。
あの時思い浮かべた景色は今もまだ変わらない。行きたい気持ちも、変わらない。
ただ、まだ「夢」だったぼんやりとした目標が、くっきりと、でもはるか遠くに現れたんだ。
「『待っていて』なんて言わないよ……」
飛雄くんは既に私よりずっと先を、今も尚ぐんぐん全速力で遠ざかっている。
もっともっと、スピードを上げろ。
幸い私は伸び代だらけ。伸び代を教えてくれる人もいる。
必ず、追いついてみせるから。
その後、試合終わりに監督を捕まえて課題克服のための自主トレメニューを相談した。
必ず時間は守ること、携帯を持ち運ぶことを前提に夜の外出や走り込みの許可も貰った。
あとは、ただひたすら努力するだけだ。
「よしっ」
ホテルに到着し、チームミーティングも済ませた後の自由時間。
自主トレをするために外に出て靴紐を結び直して立ち上がる。
軽くストレッチをしながら、再度ルートとトレーニング内容を確認した。
外は薄暗く寒いが、明るい時間に走るコースの目処はつけたし、監督に報告もしたから問題ない。
マネージャー時代の私を捨てろ。何度も自分に言い聞かせる。
私は他の何でもない、プレーヤーなんだ。
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しおり(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!ネタ考えます🤔 (2022年11月30日 8時) (レス) id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - マジで面白いです!いつも楽しみの更新待ってます (2022年11月27日 20時) (レス) id: e34fa82e55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しおり | 作者ホームページ:http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時:2022年10月10日 21時