【お疲れ様です、お嬢様】 ページ11
．
俺が現在仕えているお嬢様は、実際はかなり真面目な方だと思う。
家でこそあんな我儘娘ではあるけれど、外に出ればその態度も纏うオーラも一変。
背筋を伸ばし、前を見据えて、九条家という名を背負うに相応しい振る舞いを常に絶やさない。
学校では笑顔を崩さず、新入生にして生徒会長という大役を務めて、けれど決してその大きな肩書きに屈したりはしない。
その様はまさに、彼女こそが『 お嬢様 』に相応しいと言っても過言ではない。
そう、誰もが信じて疑わない姿が、屋敷の外での『 九条A 』だ。
「すぅ……はぁ……」
「深呼吸終わったら言ってね」
「……言葉遣いには気を付けなさい。福良」
「スイッチが入ったようですね。これは失礼致しました」
一見、地位も財力も幼き頃から手に入れているAは、なんの不自由もない、幸せな人間に見えるだろう。
俺だって最初はそんな風に思っていた。
金持ちなんて。
全員死んでしまえ―――。
小さい頃は金持ちそうな人々を見るたびに、届きもしない殺意を燃やしては、母親に悟られて叱られていた。
よほど分かりやすく睨み付けでもしていたのだろう。
こんな仕事に就くまでは、多分今でもAを含む金持ちを皆恨んでいたと思う。
こんな仕事に就いて俺は、産まれながらにして地位を得てしまった人間の苦悩を、初めて目の当たりにすることになったんだ。
―――外では別人に扮するAは、いつも玄関先に立ち止まっては、今さっきのように深呼吸をする。
俺はあまり彼女の送迎を担当しないので、この姿をお目にかかる機会は少ないのだが、山本とかは「スイッチを入れている」と言っていたので、俺もそう言っている。
「それじゃあ行ってくるわ。迎えの時間は山本から聞いているわよね？」
「えぇ。行ってらっしゃいませ、お嬢様」
校門の所に車を停めて後部座席の扉を開ければ、スイッチを入れたAが隙の無い一挙一動で車から降りてくる。
周りにはそんな彼女を様々な感情の孕んだ瞳で見つめる生徒達。
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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます！この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです！ (2021年3月30日 17時) (
レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして（といっても覚えてないと思いますが…）今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか？紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか？ (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです！お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます！普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます！ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います！ (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
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