ワレモノ注意 一 ページ27
「……お妙殿。これは何ですか?」
「卵焼きですぅ」
柳生家に仕えるオババこと、お滝は机の皿に乗せられた黒い粉々のモノを見て尋ね、答えを聞いて言葉を失った。
「卵焼きは昔から得意なんです」
お妙は料理を極めたと思っていたようだが、お滝のお陰で改良できたしレパートリーが増えた、と微笑んでいた。
しかし、机上に並べられているのは黒焦げの塊の群である。
「うちのキッチンは爆心地かァァ!!」
オババは勢いよく机をひっくり返した。
「そうですね。若妻にしたら厨房は戦地ですもの。爆心地ですわ」
「そういうんじゃなくてェェ!コレ丸焦げ!ホントに何度言ったら分かるのこの娘はァ!A殿は料理も完璧だったと言うのに、料理の一つも作れないで柳生家に嫁ごうなんて百年早いわァァ!!」
お滝は勢いよく扇子をお妙に向かって振り下ろす。
しかし、お妙はそれを箸で易々と受け止めた。
「お滝さん。仮にも私の花嫁教育係が星一徹クラッシュをしたり殴りかかってきたり、不躾じゃなくって?あとAさんの料理食べたんですね?凄く羨ましい限りです。私は作ってもらいたいけど時間が合わなくて食べられていないと言うのに」
お妙は笑顔で言っているが、額に青筋が浮かんでいて箸がギシギシと音を立てていた。
(この小娘ェェ!!今まで数多の奉公人をノイローゼに追い込んできたこのオババのイビリをモノともせんとは。A殿と合わせて二人目。あの人の場合は完璧にワシの指示をこなしおったが……いや、アレは完璧というより度がすぎるというか……)
お滝はAが柳生家で雇われるようになった頃のことを思い出した。
その時も柳生家の洗礼を受けさせるべくAにイビリをしてきたのだが難なくこなされ、難題を押し付けても彼女はそれを簡単に飛び越えてきた。
『……A殿。これは何ですか』
『?料理です』
『いや、それはそうなんですけど……お上か誰かがここで宴会でもするつもりですか』
お滝は目の前の机を見て冷や汗をかいた。
机上には美味しそうな料理が、大量に並んでいる。
どれもこれも見た目は美味しそうで、たぶん中身も美味しいだろう。
和洋中問わないビュッフェスタイルであり、全てが豪華な品目だった。
『あ、失礼しました。セレブな柳生家に合わせて少し豪華にしてみたのですが』
『少しィ!?これのどこが少しですかァ!』
贔屓目に見てもAの作ったものは少しやり過ぎだった。
ワレモノ注意 ニ→←恒道館メンバーは、門下生に一人やべー奴がいることを知っている 七 終
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刹那*桜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!! (2022年12月27日 20時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメ失礼します!! めっちゃ面白いです!! これからも頑張ってください! (2022年12月26日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - あたりんさん» ありがとうございます!! (2022年11月20日 0時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年11月14日 16時) (レス) id: c0f0373936 (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - 花香さん» コメントありがとうございます!9個もあって長いですなか一気に読んでいただきありがとうございます!!わりと読みづらい所もあるかと思いますが好みと言ってもらえてとても嬉しいです!!(;ω;) (2022年11月7日 23時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年11月7日 0時