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龍之介との1戦が終わったあと、私は報告書を纏めるために執務室へと向かった。

その道中で黒服に礼をされた。

それはいつもの事なのだが、何かが違っていた。
何かはわからない。
けれど、確実に先刻とは違った緊張感が流れていた。



ふぅ…

ため息がこぼれる。

ここのところ大きな仕事ばかりだったから疲労が溜まっている。

本来ならばこの年は華々しい青春を謳歌している筈なのに

なぜこんな事をしているんだろう。


友達を作って


学校生活を楽しんで


一般企業に勤めて


愛する人と結ばれ


安らかな死を………


そんな普通の人生に私は憧れている。

拭いきれないこの劣等感は何なのだろうか。


プルルルルル プルルルルル

「はい」

『Aちゃん?度々済まないね。ちょっとだけ来てくれるかい?』

「エリス嬢への説得ならばお断りですが」

『違う違う!真面目な話をしたいんだよ〜。ね?忙しいとは思うのだけれど…』

「首領の言葉には逆らえないことを解っていてよく言いますよ。すぐに向かいます」

『頼んだよ』


何の話だろうか。


***



「頼むよエリスちゃん!」

「嫌よ」

「ほらあ!フランスから取り寄せたのだよ?こんなにレースがあしらわれていて愛らしいお洋服。見たことがあるかい?」

「お洋服は素敵よ?」

「じゃあ!!」

「リンタロウの必死さが嫌なの」

「そんなこと言わずに〜、頼むよ〜」


そこではいつもの光景が。


「首領、やっぱり説得だったんですか」

「え、嗚呼、否、違うんだよ」

「早く要件をお願いします。」

「ん"ん"っ


最近は先代首領派はいなくなっただろう?」


「ええ」


「だけどねぇ……済まない、二人にしてくれないか」

合図と共に黒服たちが素早く出ていく

「だけどねぇ…私の首を狙う輩がいるらしいのだよ」


!!!!

その時の私は珍しく動揺を隠しきれていなかっただろう

「そ……そうですか。」


「そうなのだよ〜。だからAちゃんに見つけてもらおうと思って。」


「今の案件の方は」


「ああ、太宰くん達に任せておけば大丈夫だろう。君はジイドにも気に入られてしまったようだしね」

「そうですか。分かりました。では引き継ぎが終わり次第、すぐに取り掛かります。」


「私はAちゃんを信頼してるからね、この事は他言無用で頼むよ」


首領の表情は笑顔だったけれど、何処か闇というか、暗いものを秘めていた。

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作者名:あさ x他1人 | 作成日時:2019年12月31日 23時

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