むすんでほどけて【コラボ企画】 (ページ8)

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「ウエディングなら、背の高い人の方がいいのでは？しかも、大トリなら尚更。身長の高いモデルを先に歩かせている中で、低いモデルを歩かせるとインパクトにかけると思うんですけど」
「確かに、そうなんやけど。……でも、身長が低い人が似合う服だってある。俺が、Aさんの魅力を全部出すから、前だけ向いて歩いて欲しい……です」
「……」

なかなか言うな……。そんなこと言われたら断れないじゃん。初めから断るつもりなんてなかったけど。折角のチャンスが来たんだ。ちゃんと掴んで見せなきゃプロが泣く。

「前だけ向いて……」
「はい」
「前だけ向いて歩くだけでいいわけ？」
「え？」
「私はあなたの服の良さを全部引き出せながら歩ける。会場にいる全員の目を引きつける事だって、印象をつけることだって容易いわ」

他のモデルになんかに負けないくらい、毎日トレーニングをしている。常に履いた+7センチのハイヒール。視線の動かし方、仕草、ポーズ、見せ所、全部全部分かってる。

なのに選ばれなかったから悔しかった。泣きたかった。

でも、志麻くんがチャンスをくれたから、あなたには盛大に恩返しがしたい。

「だから、前だけなんて言わないで。私を、もっとちゃんと信じて」
「ふふふっ、やっぱいいね、Aさん。小さい頃と変わってないや」
「え？」

小さい頃……？彼と面識したのは今日がはじめてだと思ってたけれど……。どこかで一緒になってたのかな、実は……。

「Aさんにだけ似合うドレスを創るよ。それが、俺の夢だったから」
「……？どういう……、」
「ひみつ」

しーっと人差し指を八重歯が見える唇に添える彼。ショーまでの4ヶ月で志麻くんを意識し始めるなんて、この時の私はまだ知らなかった。

彼と私のプロへの道が光り輝いていることも、この時はまだ知らない。