【公開練習】9 ☆ ページ47
そして遥か向こうからすごいスピードで向かって来る王子さまが見えたかと思ったら、途中カーブを描きつつターンして、私から少し離れた位置でジャンプを踏み切った。
瞬間、険しい表情と共に、ものすごい速さで回転をして着氷する。
それは何回まわったか分からないくらいで、何よりその音の凄まじいこと。
普通のジャンプとは比べ物にならないくらい大きな音で着氷したのはもちろん、その飛距離すら本当に羽ばたいて飛んだんじゃないかというくらいの幅だった。
あまりの大ジャンプに、しばらくお客さんも固まっていて、数秒後、ようやくリンクがわぁっ!という歓声に包まれる。
「クワドアクセルだ…。」
真凜もただただ唖然としつつゆづ王子を見つめている。
「おっしゃ見たかぁ!おらぁ!!」
リンクでは、興奮した様子で何度もガッツポーズをしているゆづ王子が、雄叫びのような声を上げて客席を指差した。
「あんなに跳べるなんて…。」
一体、客席何席分の飛距離だろう。
しかも計算していたかのように、私の目の前で降りた…。
これ人間技?こんなの試合で見せられたら、得点もそうだけど、きっとすごいプログラムになる。
茫然自失で突っ立っていると、ちょうど15分たったようでリンクの担当者が私たちを呼びに来た。
「Aさま、色んな意味でお身体に障ります。そろそろお部屋に戻りましょう。」
「え、えぇ…。」
それはこれ以上興奮状態にならないように…かな。
後ろ髪ひかれながらも、ここは皇子のためにも素直にリンクを去った方がよさそうだ。
促されて、踵を返そうとしたその時、不意にゆづ王子と目が合った気がして立ち止まる。
「……。」
やっぱり少し名残惜しくてそのまま見つめていると、不意にその口許がゆっくりと動いた。
何か言葉を語っているのか、動きで読み取るために目を凝らしてさらに凝視していると…。
“お、れ、だ、け、み、て、て”
そう言って、最後に一度だけ私を指差してどこかへ滑って行ってしまった。
「Aさま、参りましょう。」
真凜にも背を押されて、いよいよリンクから出る。
俺だけ見ててって…。
無良さんに拍手したの、気にさわったのかな。
でも怒ってるふうじゃなさそうだったけど…。ひょっとしてゆづさんなりの妬きもち…。
「そんなわけないか。」
それより、まださっきのジャンプが頭から離れない私は、あの羽の衣装を着て演技をするゆづ王子の姿を想像して、益々スケート大会が待ち遠しくなった。
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鹿(プロフ) - みなみさん» どうなるんでしょう?!フリーどうなるんでしょうか!昨日はなかなか寝付けず、今日は遅めに起きました^^;朝のニュース、ずっとイチローさんで、ちょっとがっかり!? (2019年3月23日 8時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - サルコウが…サルコウがぁぁぁ…!点差が大きいな…。一面に書かれる言葉を気にしていたゆづだけど、全部イチローさんに持っていかれましたね。やっぱりイチロー引退には勝てないよね。そうか、イチローが引退か…。野球ファンでなくとも、結構おおきいな、これは。 (2019年3月22日 8時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 以前より、声が良くなった気がします^^そうとう使ってるなと思ったんですが…。(絶対家で歌いまくってると思われ)早く日本に帰ってこないかなー! (2019年3月18日 17時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» すごい!現地観戦だなんて!楽しんで応援してくださいね^^帰国はまだかなー。ニュースも目が離せないですね! (2019年3月18日 17時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - あっちもこっちも見るところがいっぱいあって、王子はやきもちやいちゃいますね。雪肌精のCM、素敵ですね。芝居の台詞はダメでも、ナレーションは心地よい声で向いてる気がします。引退後はあちこちから引っ張りだこでしょうね。 (2019年3月17日 19時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年2月15日 20時