氷の国20

【パーツ】6　☆ ページ35

「ラインストーンはけちらないで。きらきらさせるのがポイントだから。」

「衣装作りって大変なんですね…。」

凝ったデザインだと、たった一着作るのにもこんなに時間と労力がかかるなんて…。
これはショートの衣装以上だ。

だけどそんなたくさんの気持ちを受け止めて、ゆづ王子は日々スケートをしてるんだなと改めて誇らしく思う。

「Aちゃんの身体に負担のない範囲でね。無理せず、気分の良い時だけ手伝ってくれたらいいから。」

「わかりました。とりあえず今は体調も良いので、試しにパーツ作りにチャレンジしてみます。」

側にある椅子に腰かけて、はっと息をはいたら、なるべく大きな羽を一つ選んで、作業台に置く。
そしてピンセットを使って、ラインストーンを真ん中の硬い線に添って接着してみるのだけど、この接着剤の加減が意外と難しく、多くても少なくても綺麗に付かない。

「黒い羽だけだと重くなっちゃうから、グレーのも混ぜようかな〜。」

背中はとびきりゴージャスにして…。とジョニーさんの独り言を聞きながら、なんとなく頭の中で出来上がりを想像する。

これを着てスケートをしているゆづ王子、かっこいいだろうな…。
黒い衣装は、あの博物館でもあまり見たことがないから、ファンの皆もびっくりするかもしれない。

この羽のパーツだって、王子さまの名前である“羽生”にぴったりだし、金色のラインストーンが、金メダル以外寄せ付けない気がする。

…あ、そうだ！背中に生えてる黒い羽が衣装と合わさって、この世のものではないほどに神々しい姿になるのでは！
これぞ、世界に君臨する王！みたいな。

どうしよう…。早くこれを着たゆづ王子が見たい。
楽しみでにやにやが止まらなくなった私は、今の恥ずかしい自分をジョニーさんに見つからないように口許を隠す。

そして想像すればするほど上がっていくテンションに、顔が熱くなる。
あ、でも…。

「あの羽、私しか見えないんだった…。」

そうだ、他の人には見えないんだ。
そんな大事なことに気付いて一気にテンションが下がる。

あぁもう、どうしてなの！絶対的にかっこいいゆづ王子を皆に見てもらえないなんて…。

く、悔しい…。
ならばと、どうにか肖像画にして残す方法はないものかと頭をかかえる。

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