氷の国20

【三つの真実】4　★ ページ21

“まず洞窟で二度助けている…”


ニジンスキーが得意気に、親指と人差し指を立てて２を作った。

「そうなの？」

「洞窟…ということは、閉じ込められた時でしょうか…。」

心当たりがあるのかAがすぐに返答した。


“そうだ…簡易的な抜け道を造ってやっただろう…”


抜け道…？

「え！あれってニジンスキーだったの？！」

そしてすぐさまぴんときた俺は、馬車の中で大きな声を響かせる。

と言うことは、右と真ん中は元々繋がってなかったってこと…。


“本来あれはただの壁だった…そこに穴を開けるのに１５分もかかってしまったが…無事に出られただろう…”


「……。」

まじか…。こいつが洞窟の壁に穴を開けたなんて…。
村の人たちがみんな不思議がってたのは、あるはずのない通路が突然現れたからだったのか…。

「ニジンスキーさん。では、あのまま閉じ込められていたら私は…。」


“低体温で皇子の命共々消えていた…かもしれない”


「嘘！」

思った以上に恐ろしい顛末に口を押さえる。
でもそうかもしれない…。確かに洞窟の寒さは自分も気になっていた。

通路だって、やけにタイミングがいいなと思った記憶もある。

「洞窟で二度って言いましたけど、あと一回はもしかして私を支えてくれた風ですか。」


“そうだ…よく分かったな…”


Aが、やっぱり…。と頬に手をあてる。

「どういうこと？」

「お恥ずかしいのですが、洞窟内を歩いている時、濡れた場所で滑ってしまって…。」


“倒れそうになった所を背中から風で支えてやったのだ…”


「それ転けてたら大変じゃん。」

「すみません…。」

小さくなるAはひとまず置いておいて。
こうなったら最後の一つが気になるので、俺は食い気味にニジンスキーに尋ねた。

「じゃあ３つ目は？」


“それは主であるお前の命も救っている…”


「俺の？」

さっきもそんなこと言ってたけど、視察中俺とAが一緒にいたのなんて、橋の建設現場くらいだ。
その時は何のトラブルも無かったはず。

【三つの真実】5　★→←【三つの真実】3　★

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す