氷の国20

【仲良いの？】3　☆ ページ3

「これ、何…？」

「畜光石。朝の間にあの天井の隙間から入って来た光を蓄えて、発光するんだよ。」

少年が指差した方に視線を向けると、ここが洞窟にも関わらず隙間があるのが分かる。

それでも、自然の力だけでこんな素敵な場所になるなんて…すごい。

「王子さまにも見せたい…。」

あまりの美しさに、私が胸に手をあてて気持ちのままに呟くと、少年がしばらく黙ったあと、少し言いにくそうに話しかけてきた。

「ねぇ…、王女さまって王子さまと仲良いの？」

突然変なことを聞かれて、薄暗くて良く見えないのにも関わらず、私は少年の表情をうかがうように見つめてしまった。

「どうして？」

「だってこの村へ来てからあんまり二人で話してるとこ見ないから…。」

もじもじと手を頭の後ろで組みつつ、少年が不満げに口を尖らせる。
一体どうしてこんなことを聞いてくるのだろうかと思いながらも、少し屈みながら差し障りのない無難な言葉で説明した。

「それは王子さまがお仕事中だからよ。」

「でも、王女さまが無良のにいちゃんといた時は、もっと楽しそうだった。」

えっ！
突然少年の口から出てきた名前にびっくりすると同時に、目を見開く。

無良さんといた時って…まさか私は以前この村でこの子に会っているのだろうか。
当時の記憶をたどってゆく中で、子供とふれ合っていそうな場面をぼんやりと思い出していると、思いあたる節が幾つかあることに気付いた。

「君ひょっとして…。」

「にいちゃんの家に案内したじゃん。倉庫でスケートの話だってしたし…。」

「あっ！あの時の…。」

そうだ。一人で倉庫にいた時に食べ物を持ってきてくれた子供だ。
スケート大会のショートプログラムで、パトリックが首位に立ったことを教えてくれた…。

「あんな王子さまより、無良のにいちゃんと結婚して欲しかった。」

「……。」

「そしたら王女さま…いや、姉ちゃんはこの村で幸せに暮らしてたんじゃないかなって、俺いっつも思ってたよ。」

驚いた…。
無良さんに求婚されたことは王子さまにしか言っていないのに、どうしてこの子は的を得たようなことを言うのか…。

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