氷の国20

【心配】4　★ ページ11

やっぱり連れてこない方が良かったかな…。
そもそも、シロのことでくだらない意地の張り合いなんてするんじゃなかった。

大好きな友達が突然黙っていなくなったら、俺だって落ち込むわ。
プルシェンコのことだって、未だに引きずってんの誰だよ。

もっとAの気持ちに寄り添って、ただ一言、俺が悪かったって言えば済んだことなんだ。
そしたらもっと気持ちよく、この視察を行えたのに…。

一人もやもやしつつ、手伝いの村人が不安そうに見つめる中、時折ふわふわしそうな足元をしっかり踏みしめてまっちーと進む。

唇をぎゅっと結んで…。ここで涙は絶対に見せないぞと強い気持ちをもって。

すると途中で、ふと耳に子供の声が聞こえた気がして立ち止まる。

「まっちー、子供が入ってきたんじゃない。」

「子供？」

まっちーには聞こえなかったのか、きょろきょろと辺りを見渡している。
自慢じゃないが俺は耳が良い。どんな小さな音も聞き分けられるので、子供の声がしたことは間違いない。

「すぐに退出させて。」

さっき外にいた子供だろうか。
ここは危ないので洞窟から出させるよう指示をしつつ、再び右側の通路へと歩き出すと…。

「あれ？元いた場所に戻ってきちゃった。」

今度ははっきりと。ここにいる全ての人にさっきと同じ子供の声が聞こえたようで、皆の動きが止まる。

「だから子供は外に…。」

不機嫌に振り返るのだが、俺はその子が三つに分かれている真ん中の通路から出てきた事を知る。

「え…！」

「ん？」

鉢合わせをしているまっちーと子供が驚いたような表情で向かい合っているのを変だなと思いつつも、とりあえず早く外に出さなきゃ、とその少年へ近づく。

「まだ中に人がいたの。」

しかし、少年の後方を見つめるまっちーから発せられた言葉に、今度はこっちが驚いた。

「王女さま…！」

まっちーがそう叫ぶと同時に、なんとその奥の通路からAが出てきたのだ。

なんで…。
崩落して閉じ込められたのは右の通路なのに、どうして真ん中から出てくるの…。

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