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非番の日……山城狗狼 ページ10

城下町の喧騒をぼーっと聞き流しながら、男は一人、甘味屋の外に設置された椅子で、

団子をもぐもぐと咀嚼していた。

仕事も無い、非番の日。

提出する書類も仕上げてしまい、特にこれと言ってやるべきことも無く、やりたいことも無く。

小腹も空いたからと甘味屋に入ると、新作のお菓子がずらりと並んでいたものだから、

店員にあれよこれよと勧められるままに、一人で食べる量ではない程の、

沢山の菓子を買ってしまったのだ。

どうしたものかと考えながらも、買ってしまったものは食べるしかないので、

男は四本目になる団子を頬張っている。

甘いものは好きなのだが、ここまで多いと頭が痛くなってくる。

普段ならこんな無駄遣いはしないだろうに。

食べてもなかなか菓子は減らないので、町の子どもたちに配ることにした。

町でよく子どもと遊ぶからか、顔なじみになった子どもも多い。

「にーちゃん、なんでこんなにお菓子買ってんの?」

「無駄遣いはだめだよって、かーちゃんが言ってたよ!」

小さな子どもからの叱責を受け、男は、う、と息詰まる。

どうにも最近、ぼーっとしているのだ。

(鍛錬が足りないのでしょうか……嗚呼、叱られてしまいますね)

少し暗い気持ちになった男はしょんぼりと溜め息を吐いた。

そんな男の袖を引っ張って、口々に遊ぼう、と言い始める。

「そんな暗い顔すんなよ、にーちゃん。俺たちが遊んでやるから。」

「そうだよ、おにーちゃん。かくれんぼしようよ!かくれんぼ!」

「やー!おにいちゃんは今日、私と遊ぶんだもん!」

喧嘩でも始めそうな子どもたちを見て、男はしゃがみこんで視線を合わせた。

「順番に遊びましょう。今日はお仕事はありませんから」

その言葉に、子どもたちは目を輝かせた。

「ほんと!?」

「にーちゃん、おんぶ、おんぶしてよ!」

「その次ボクね!」

「広場までかけっこだよ!」

あれよこれよ、と言われるのは、今日二度目だろうか。

嗚呼、仕方ない。

こうなったら言われるまま遊ばなければ開放してもらえないのを、男は知っている。

ならば彼らの気の済むまで遊んでやろう。

「はやく、狗狼にーちゃん!」

狗狼、と呼ばれた男は、呼んだ子どもを、細い腕でひょいと持ち上げ、肩車してやる。

「さぁ、あと二人は持てますよ」

笑って言うと、子どもたちは狗狼に飛びつくように、俺も私も僕もと寄ってきた。

山城狗狼の休日は、子どもと遊ぶだけで消費されそうだ。



4月2日更新 ゆずぽん

過激な眠気覚まし……獄門漸→←城下町の少女たち…小麦咲良



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すとろべり-(プロフ) - 更新しました! (2018年6月4日 12時) (レス) id: c48c36fb49 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべり-(プロフ) - 更新します! (2018年6月4日 10時) (レス) id: c48c36fb49 (このIDを非表示/違反報告)
雪抹茶(プロフ) - 更新しましたー! (2018年6月2日 19時) (レス) id: 9248342184 (このIDを非表示/違反報告)
雪抹茶(プロフ) - 更新しまーす (2018年6月2日 18時) (レス) id: 9248342184 (このIDを非表示/違反報告)
松宮カナメ - 更新しました (2018年5月21日 14時) (レス) id: eb873f1f0d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神様の依頼箱 x他13人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年3月17日 12時

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