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そんな重大発表があってから早半年、大した変化もなくいつも通り過ごしている。
「あれは何と言うか………え、って感じでしたね。」
「ほんまにな。言われた時一瞬、悠くんって誰やねんってなったわ」
「わかります」
「いや、うらたんは分かったらあかんやろ」
あっけなく失恋した俺と浦田君も、その場では動揺と怒りと悲しみと…その他諸々で屍のようになっていたものの、今更バレて気まずくなるのだけは避けたいということで自然な対応を心がけた。
その代わり、二人で飲むようになった。もちろん四人でも飲むがそれとは別で。
最初の頃はAのことばかり話していたけど、最近は仕事の愚痴とか趣味の話とか、ただ楽しくお酒を飲む時間になっている。
浦田君がお酒を飲まない理由は『酔ってAにダサいところを見せたくない』だけだったから、二人の時は飲んでくれるし、そのおかげで浦田君呼びからうらたん呼びになった。
「んぅ〜…」
「なにその声w眠いん?」
「はい…最近寝不足で…」
「じゃあ、今日はもうお開きにしよか。送るから帰ってゆっくり休み?」
「なんか、イケメンですね…悔しい。」
「送るって言っても帰り道同じやけどな」
「確かに」
「じゃあ、ありがとうございました。」
「ん、しっかり休むんやで。おやすみ。」
「おやすみなさい」
うらたんと別れて、自分の家に向かう。一人でカラオケにでも行こうかと思ったが、明日は早かった気がして大人しく帰る。
「?! なにしてるん?!」
「あぁ、泉…。おかえり。」
家の前で座り込んでいる人を見つけ、内心怖がりながら近づくと、その人影はAだった。
「遅かったね…どこ行ってたん?」
「今日はうらたんと飲みに…。いつからおったん?」
「えー、2時間前くらい?…とりあえず、入れてください!!」
そう言いながら勢いよく頭を下げるAは、今自分がとんでもないことを言っている自覚がないのだろう。こんな時間に男一人暮らしの家に入れてくれなんて…とも思ったが、今に始まったことでもないし放っておくわけにもいかないし、とりあえず入れる。
「で?なにがあったん?」
「え?」
「なんかあったんやろ、目赤いし。話したくないんやったらいいけど。」
「はは…、バレとった?」
「当たり前やろ。」
_どんだけ見てきたと思ってるん。
そう言いそうになって、口を噤んだ。
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ひな(プロフ) - 四ツ谷さん» ありがとうございます!!四ツ谷さんにお褒めいただけるとは思わなかったのでとっても嬉しいです……! (2017年10月9日 21時) (レス) id: e3e9fe3651 (このIDを非表示/違反報告)
四ツ谷(プロフ) - え、あ、あ、好きです。え、本当好きです。あのもう好きです( 語彙力 )もうセンラ様の切ない心の表現とかきちんと出来ていて凄いな〜〜と;;これはこれでハッピーエンドなのかな、と思いました。本当に最高でした、続編も見させていただきますね…! (2017年10月9日 0時) (レス) id: b2e4870ae8 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - コメントありがとうございます!終わり方が気になっていたのですがそう言っていただけて安心しました。 惑星ループの方もゆっくりですが更新していきますのでよろしくお願いします! (2017年8月14日 17時) (レス) id: e3e9fe3651 (このIDを非表示/違反報告)
優音(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白かったです。とても切なかったけれど、終わりにはとても胸がほっこりとしました!すごく素敵なお話で途中泣くかと思いましたw 惑星ループの方も覗いてきます!! (2017年8月13日 21時) (レス) id: eeac539ce2 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 皐月美柑さん» コメントありがとうございます!そこまで言って頂けるなんて…とても嬉しいです!!読んでくださりありがとうございました! (2017年8月10日 17時) (レス) id: e3e9fe3651 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天晴 | 作成日時:2017年7月26日 0時