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「この箱の中に、人が閉じ込められている。今現在、我々では開ける方法は皆無。そこで、輝夜さんなら開けられないか、と思った次第なんだけど……」
私は箱をまじまじと見る。
確かに、まだ生きている魂がいる。
ただ開けるっていうより、この箱の能力を無効化した方が早そうだ。
私は術をかける。
途端に箱から大人が出てくる。
成功したようだ。
「……お、早かったな」
あれ、大してこの子供たち…喜んでなさそうだぞ。
いゃ、2名ほどは良かったって顔してるか?
彼らは話をしているので、私はそっと離れる。
「手を煩わせたね。ありがとう」
「別に。こんなの朝飯前さ。……余に出来ないことはない」
出来ないことはない。
はずなのだがなぁ。
私は、人間共に嘘をついた。
まぁ、並大抵のことは出来るから良いか。
「また何かあったら呼べ。……お前らのことを気に入った」
「!」
「余は帰る」
「ま、待って!……あ、いゃ、やっぱりなんでもない」
九十九はなにか言いたげだったが、そう言って言うのをやめた。
途中で止められると気になるものだ。
「言ってみろ。……聞きたいことがあれば普通に聞けばよい」
「……じゃあ聞くけど、君は前地球にいた時に…りょ…結婚をしていたのかい……?」
結婚。
私には縁がない言葉だ。
だが、この聞き方は私にそれが事実かを確かめようとしている。
つまり、私が地球で誰かと結婚していた、と誰かから聞いたと考えるのが筋だろうか。
つまりは、事実。
私が忘れているだけで。
「……悪いがその質問には答えられそうにない。その記憶はない。多分…封印した」
結婚。
それは人生で一番幸せなことだろう。
結婚という言葉が胸に引っかかる。
「……!え!ご、ごめん!」
咄嗟に九十九に謝られる。
ふと頬を触ると、涙が流れていた。
私は重いため息をつく。
余程忘れたくはないことだったのだろう。
だが、月にいる間はその記憶が邪魔だった。
……幸せだったのだな、私は。
心は覚えているのだな。
「気にしないでくれ。……自業自得だからさ。他に聞きたいことがないのなら行く」
「あ、うん。ありがとう」
記憶を戻したとして、この気持ちが晴れるとは限らない。
だって、人の寿命など短いのを知っている。
なぜ、私は不老不死だというのに……愛を知ってしまったのだろうか。
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ミルクティー - 面白い!早く、新しい更新来ないかな〜 (3月31日 16時) (レス) @page21 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
MR サナリア(プロフ) - 新作キターーーー! 嬉しい〜! (3月24日 15時) (レス) @page5 id: bd9c6547a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:妃夏 | 作成日時:2024年3月24日 13時