【呪術廻戦】月姫 (ページ17)

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約1000年を経てページ17

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新しく仕立てた着物に袖を通す。

マントを羽織り、立ち鏡の前で自分の姿を見る。

「こちらで顔を隠された方が良いかと」

私の侍女がそう言う。

確かに、この浮世離れした美しい顔では少々目立ってしまうだろうか。

私は渡された布を上手く頭に覆う。

あとは影でどうにかなるだろう。

私の部屋に新たな王が訪ねてくる。

寂しそうな目で私のことを見るものだから、撫でてやった。

「ついに行かれるのですね」

「あぁ。やっ…と、お前らの育成が終わったからな」

本当に長かった。

これほどまで月兎の知能が低いことに驚いた。

全ての月兎の食生活を変え、学舎や色々と月兎たちの生活を変えた。

やっと、月兎たちだけでやっていける時代が来たのだ。

これで私は帝という位から降りられる。

「たまには月にも顔を出してくださいね。……皆、結構寂しいんですよ」

「はは、目的が果たせたら遊びにくるさ」

約1000年。

私は不老不死だということを活用して、色々なことを出来るようにした。

私に不可能なことはない……はずなのだが。

カツカツと、下駄の音だけが、死者が眠る場所に響く。

「……やはり、寿命が来た者を蘇らせるのは無理だったな」

割と立派な墓に、私は花を手向ける。

人がいない中、私が楽しく過ごせたのはお前のおかげであろう。

お前に……救われていた。

感謝している。

「行ってくる。……親友よ」

地球での土産を楽しみにしていてくれ。

……さて、この雑な地図をどうしたものか。

だから世継ぎを残せと言ったのに。

これでは私の探し物がどこにあるか分からないではないか。

まぁ、それも一興か。

私は沢山の月兎に見送られながら、月を後にした。