【呪術廻戦】月姫 (ページ13)

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満月の晩

輝夜は術で宿儺を深い眠りに落とし、そっと家を出た。

一通の文と、薬を残して。

琥珀色の瞳からは涙が流れていた。

幸せの色だった彼女の瞳は悲しみの色へと変わる。

頭を空っぽにしたく、無我夢中に走った。

ふと足を止めると、そこには季節外れのススキたちが一面生い茂っていた。

彼との出会いもこんな場所だった。

輝夜は泣いた、それはもう目一杯。

草を踏む音が響く。

「姫様」

「……羅刹」

迎えの時だ。

羅刹は彼女に手を差し伸べる。

しかし、彼女はその手を取らなかった。

決して月に行くのを拒否したわけではない。

あの人の手以外を掴むつもりは無かったのだ。

輝夜は自ら迎えの馬車に乗り込んだ。

輝夜が乗り込んだのを見て、馬車は月へと発車した。

その後、月は輝夜を次の帝とし、不老不死の薬に手を出したという罪は無かったことになった。

輝夜は月人を全員処刑した。

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「姫さま、まさか月人を全員処刑するなんて。それに羅刹様まで……。あ、今は帝でしたね」

私が巻物を広げ、政務を行なっていると、一羽の兎が話しかけてくる。

月兎の執務室の出入りは自由にしているが、基本的に誰も来ない。

馴れ馴れしく話しかけて来たのは誰だ？

「……お前、あの時の？」

「そうです」

どうやらコイツは地球で2度も会った月兎のようだ。

たまたま月の方に戻っていたのだと言う。

「お前、名は？」

「そういえばお話したことあるのに名乗っていませんでしたね。ハルと申します」

「そうか。此度は何用だ？」

「特にこれといって用事はありませんよ？新しい帝を見ておこうと思って。にしても、何故このようなことを？」

ハルは私が月人を全員処刑したことについて聞いているのだろう。

まさか私がこんな残虐な行為をするとは思ってもいなかったのだろう。

しかし月兎たちは何とも思っていない様子であった。

興味がないのだ。

誰も私にに質問した者などいない。

この兎以外は。