【呪術廻戦】月姫 (ページ12)

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「戻らないわ」

「何故ですか。……月の民を見捨てるつもりですか」

「そうよ。私を追放したのはあなた達よ」

羅刹はぐうの音も出なかった。

追放された輝夜が、月を助けるなんて選択肢があるわけがない。

恨んでいても仕方がない。

それに、彼女には愛する人がいる。

ずっと側にいると決めたのだ。

「そんなに地球に思い入れがあるのですか？この短期間で？」

「えぇ。私、結婚したから」

「……ならその殿方を殺せば共に来てくれますか」

脅迫。

輝夜は思わず羅刹に掴み掛かった、が。

その手は空を切った。

幻影なのだろう。

輝夜は彼を睨んだ。

「次の満月の晩、姫様を迎えに参ります。どうかその時までにご決断なさってください」

幻影は春風に吹かれ、消えていった。

輝夜は雲に隠れようとする月を静かに見上げた。

満月までそんなに時間は無かった。

(何故、人はこうも好き勝手に……)

寝所に戻ると、宿儺が起きていた。

輝夜は起こしてしまったのだろうか、と心配になる。

「起こしてしまいましたか……？」

「半分はそうかもな。……輝夜がいないと肌寒い」

ぐっ、と腕を引かれ宿儺の腕の中にすっぽりとはまった。

とても温かった。

輝夜は心からこの人のことを愛しているのだと自覚した。

離れたくない。

だけれど、殺されてしまうかもしれない。

それだけは嫌であった。

「宿儺様」

「どうした」

「……お慕いしております」

彼が生きていれば希望はある＿＿＿＿