うそつきとキス 2

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「向こう、彼氏いるから」



その彼氏がメンバーの翔太くんだということは、さすがに康二には言えなかったし、言う必要がないと思った。
康二は俺の言葉を聞いて、口をぽかんと開けて固まったまま。
やっと何かしゃべったと思ったら「まじか」という一言を残してまた静寂に逆戻り。



互いにどういう言葉をかけていいのかわからなくなり、ただひたすらに目の前にある酒と料理に手を伸ばす。
「とりあえず生で」と開始早々にかっこつけて頼んだ飲みなれないビールにさえ手を伸ばしてしまうありさまだ。


普段、酒に溺れるなんてことはほとんどない俺と康二が、今日は早いピッチで酒を煽り、互いにこれ以上呑んではいけない寸前のところまできていた。








「いけないって分かってるけど、すっげぇ好きなの。どうしたらいいか自分でもわかんねぇの」






酒の力を借りて出た言葉はなんと格好悪くて、素直な気持ちなのだろう。
言った自分が恥ずかしくなるくらい、まっすぐな言葉に放ったあとで「あぁこんなにAさんのこと好きなんだ」と冷静に見つめる自分もいた。


はじめて出会ったときからAさんのことをずっと、ずっと好きだった。

翔太くんの彼女だと知ったその瞬間も、諦めなければいけないと分かりつつ、出来ずに都合の良い関係に引きずり込んだ。




どんな繋がりであれ、Aさんの中に俺という存在を残しておきたかったんだ。









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