うそつきとキス

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Aさんの家をあとにして、一緒に外に出た。
駅までの道すがらは、「誰かに見られたらダメだから」とそっと距離をあけて歩こうとAさんから提案された。

別に誰も気にしちゃいないだろう、とは思うけれどそういうところまで気が回るのは長年、特殊な世界を生業とした彼氏と付き合ってきたAさんだからこそだろう。
そんな何気ないところでも翔太くんの影がちらつく。




「じゃぁ心配だから先歩いて」

「何を心配することがあるのよ」

「だってAさん迷子になりそうじゃん」

そう笑うと「自分の家の最寄り駅までで迷子になったらただのアホの子じゃん！」とAさんが声を大きくして抗議する。

「めめくん私のことバカにしてるでしょ」と拗ねたように言う彼女の髪を乱暴に撫でる。







電車も同じ車両に乗り込む。一つ離れた扉に向かい合わせで立つとお互いそこに相手がいるのを確認し、目線を絡ませた。

外の景色に目をやったり、中吊り広告に目を向けたりしながら、その視界の端にAさんの姿を映す。
ふいに目が合うとAさんが小さく笑って目を反らす。




蓮Aさん、かわい
Aめめくん、かっこい




画面に映し出された思ってもみない言葉に思わず笑みが零れる。それを誤魔化すように小さく咳払いをすると、Aさんも真似してコホン、と小さく咳をした。





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