うそつきとキス

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「めめくん、明日お昼から？」

事を終え、2人で素肌のまま布団にくるまって余韻を楽しんでいるとAさんがそんなことを言う。
本当なら明日のことなんか考えずにこのままAさんと過ごしたいのにその言葉で嫌でも現実に引き戻される。


「ん、そ。なんで知ってんの？」

「翔太が言ってたから。最近グループ仕事多いしそうかなーって」

翔太、という名前につい俺は顔を顰める。
Aさんはそれに気づくと、俺の顔を優しく撫でた。



「こわい顔してる」

「だって、」

なんで俺と一緒にいるときに平気で他の男の名前を出すの、とか、Aさんはなんとも思わないの、とか、言いたいことはたくさんあって。
でもそれは間男の分際で言えることではない。
一度口にしたらとめどなく溢れてきてしまいそうなので、俺はそれをぐっと飲みこんだ。



「ごめんね、今はめめくんだけ」

そっと頬に口づけが落とされる。
あぁ本当にこの人はずるい。



「蓮」

「え、」

「蓮って呼んでくれたら許す」


ぷいっ、と反対側に顔を反らす。これが今できるせめてもの抵抗。
俺だけだよ、ってたとえ今この瞬間だけでもいいからそう思わせて欲しい。



もー、とAさんは言いながらゆっくり身体を俺の上に乗せると、両頬を手で優しく包みじっと見つめてくる。

「れ、ん」


呼び終わるか呼び終わらないかのところで我慢できずに唇を貪る。
好きだから、今だけは、せめて今だけは俺のものでいてくれ、と願いながら何度も口づけを落とした。







Aさんの本命の彼氏は、俺が1年前に加入したグループにいた。
つまりAさんは彼氏と同じグループの男に手を出した、ということ。

同じグループに本命と間男がいる状況ってなんだよ、と何度も思う。
それを平気で長い間続けるAさんも、そしてそれを受入れ続けている俺も、うそつきだ。







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