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認識しきれていなかった ページ22

Aはいつだって笑っていて。いつだって楽しそうに、嬉しそうに、そういうポジティブな感情を包み隠さずに顔に現して接してくれるから、彼女に病があることを忘れかけることはよくある。無理をして、本心をひた隠してずっと俺と居たのだろうかと考えると、けれどそうではないように思えた。彼女が発する言葉の端々からも、声色からもその表情からも、繕っているように感じるものは何一つとしてなかった。あくまでも俺の見解ではだけれど。時折、一瞬だけ悲しげな、切なそうな表情を見せることはあったが、それ以外では彼女はきっと、心から楽しんで、喜んでくれていたのだろうと俺は思っている。そう感じている。

だからこそ、彼女が持っているものをしっかりと認識しきれていなかったからこそ、俺は彼女の身体から少しずつ体温が失われていくことを恐ろしく思ったのだろう。彼女が死んでしまうだなんて今まで考えもしなかったから、急激に恐怖が俺を襲ったのだろう。また状況がすぐにAを助けられるようなところではなかったのもあるかもしれない。

兎に角俺は、きっと、何も分かってなどいないのだ。何も。Aの本質を。彼女の本当を、俺は一欠片だって目にしたことがないのだ。分かっていなかったから、こんなことになったのかもしれない。本当が分からない俺に何が出来たのかも分かりはしないけれど、それでも、悔やむ心はそれを理由に静まりはしなかった。


閉められたカーテンの隙間から漏れてくる白い光を眺めながら、やっぱり俺はここに居てはいけないような気がして、ふと椅子から立ち上がる。鶴見にAを見ていて貰えないかとナースステーションに向かおうとした。

すると、彼女の指先が小さく痙攣するように動いたのが視界に入った。思わず動きを止めて彼女の顔を見ると、Aはゆっくりと、睫毛をか弱い力で震わせて、目を開いた。


その瞬間にさっきまで考えていたことが頭から吹っ飛んでいくようで、ベッドに両手をつきながらに彼女の名前を呼んだ。彼女は俺を真っ直ぐに見据えると、酸素マスク越しのくぐもった声で、「銀、さん…?」と俺の名前を口にした。


「…ここ…」

「病院だ。海からの帰りで発作を起こして倒れたんだ。覚えてるか?」


なるたけ簡潔にそう告げると、Aは暫し周囲を見回してから僅かに目を見開かせて、思い詰めたような表情を浮かべると「ごめんなさい」と謝った。

またここに→←理解しているつもりでいた



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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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