八十三 ページ8
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「んじゃのう。おりょうちゃん、Aちゃん」
坂本は最後まで、Aのことを聞かず、その場を去っていった。
ただ違うのは、笑みの中にどこか違う感情があるように思えることだけだ。
ふうと、一息つくと、
「Aちゃん、お疲れ様」
背後からお妙が声をかけた。
「今日の集計したらしいんだけど、貴方今日の売り上げ一位みたいよ」
「えっ」
驚きの声をあげ、売上表を見てみれば、桁数の多い数字。
そこに、三番卓の文字。
(そういえば)
警戒していた為、坂本が酒を何を選んでいたかなんて、覚えてもいなかったが、高そうなラベルがついていたのをうっすらと思い出した。
(私のこと聞いてこない癖に、何がしたいのあの人)
「坂本さんに、真選組に協力してること話してるんでしょう。よかったわね、早いうちに店のナンバーワンになれそうよ」
(全く言ってないですよ)
お妙の嬉しそうに言う姿にそう言えず、はあ、と返すので精一杯だった。
その日から坂本は毎日のようにすまいるに訪れ、Aに金を落とした。
働いていることを聞かず、相変わらずへらへらとしながら話す。
電話やメールで連絡してくることもなかった。
それが逆に不気味さを感じさせた。
「坂本さん、最近はAちゃんにお熱ねえ。あれだけ私に結婚してくれって言ってたのに」
「おりょうちゃんのこと、わしは変わらず好きぜよー!でもあのこんまい新人ちゃんは、わしの金剛石によう似とってのう!つい世話を焼きたくなるんじゃあ」
坂本はあっはっはと声をあげて笑った。
その坂本の手により、あれよあれよとAはナンバーワンの席に位置していた。
店が終わり、帰路へと足を向ける。
『土方さん、私ナンバーワンになりましたよ。犯人が来るかもしれません。警備の方よろしくお願いします』
と歩きながらメールを打てば、どすんと大きな影にぶつかる。
「すみませ…あ」
顔を上げてみれば、にっこりと笑う眼鏡をかけた男。
眼鏡の下の瞳は、怪しげに青く光っていて。
「Aちゃん、アフター頼んでも良いかのう」
「…すみません、アフターはまた今度でお願いします」
一礼して通り過ぎようとした時、
「....わしに何も言わず、水商売とはどういうことぜよA」
またいつかのように、ふわりと抱え上げられ、抱き寄せられる。
視線を合わせるように、逃さまいとがっちりと後頭部を持って、真っ直ぐにAの瞳を射抜いていた。
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Nattu(プロフ) - connyさん» connyサン!再度コメントありがとうございます。嬉しいです^^いつの間にか4作目で、私自身いつ終わるんだろこれ…状態なので何シーズン続くか未定です笑 これからも温かく見守っていただけると幸いです* 長きに渡るこの作品を読んで下さり誠にありがとうございます (2021年3月3日 12時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - シリーズ4個目…本当にすごいです…!続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月25日 21時