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九十八 ページ23

貰ったチューペットをちびちびと舐める。
隣を見れば、銀時も真っ直ぐ目を虚ろにさせて舐めていた。



「この時間になっても、夏はあちぃねえ」



そう言って、銀時は汗を拭う。
同様に、Aの頬にも汗が伝っていて。
太陽が沈みかけていても、未だ蒸し暑い夕暮れだった。

不意に首巻きがしゅるり、と解けて落ちる。
Aが目を丸くしていると、銀時は首巻きをAの膝の上に置いた。



「いくらなんでも暑いだろうが馬鹿」



見ているこっちも暑くなる、と銀時は空を手で仰いだ。
銀時はアイスを咥えたまま、膝上の首巻きを見つめる。



「お前、ほんとそれ大切にしてんのな」



「…ええ、坂本さんから頂いたものですから」



「辰馬も幸せもんだねえ。こんないいこに愛されて」



銀時にいいこ、と言われ、Aは黙り込む。

かつて、銀時に想われ、それに答えられないまま、坂本を選んだ。
坂本と同様に、Aを大切にしてくれているのは変わりないのである。

咥えていたアイスが、熱で溶け、口から垂れていく。




「おい」




銀時の手が伸びる。



「っ?!」



Aの声にならない声が出る。

銀時はくいと口から垂れたアイスを拭き取った。
そして、



「ぼうっとしてんじゃねえよ。こぼしてんぞ」



眉を下げて、Aを愛おしそうに見つめた。


(この目前にも)


銀時はまだAのことを好きでいるのではないか、Aの中でそんな考えがぐるぐると駆け巡る。

目を丸くして、銀時を見つめれば、銀時は我に帰ったようにはっとした顔つきになった。
Aに触れる手はすぐに離され、そっぽを向いた。



「....悪りぃ。つい」



そんな様子にAの胸は痛む。


(中途半端に関わるのは良くないよね)


あの、銀さん、と口を開いた時、



「あーもー分かったから。謝んないでくんない」



銀時は言葉を制した。



「謝られると逆に辛いから」



「でも銀さん、たぶんですけど、私のこと、未だ…」



そう言うと、銀時は大きな溜息をつく。



「あのねえ、そう簡単に吹っ切れるもんじゃないの。お願いだから、普通にしててくんない」



その目は少し寂しそうに、暗い色をしていた。
銀時の顔を見つめていると、銀時はAの頬つねる。



「いだだだ」



「うわ不細工」



そう言って眉を下げて笑った。

(銀さんはやっぱり優しすぎるくらいに優しい人だ)

Aはつられて、笑みをこぼした。

.

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Nattu(プロフ) - connyさん» connyサン!再度コメントありがとうございます。嬉しいです^^いつの間にか4作目で、私自身いつ終わるんだろこれ…状態なので何シーズン続くか未定です笑 これからも温かく見守っていただけると幸いです* 長きに渡るこの作品を読んで下さり誠にありがとうございます (2021年3月3日 12時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - シリーズ4個目…本当にすごいです…!続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月25日 21時

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