八十七 ページ12
.
向かってくる男に拳をぶつけようとしたその時だった。
「うがっ」
前を通りすがった影に、男は吹き飛ばされる。
手に持っていた刀は地面に転がった。
「夜な夜な女ナンパなんざあ、洒落てんねえ」
雲が風で仰がれ、月が現れ始める。
月の光にさらされ、揺れる波の柄の着物。
『私が困っている時に助けてくれて
ヒーローみたいだなって思ってます』
ふわりと風に流れる銀色の癖っ毛。
振り返り、Aを見るだるそうな赤い目。
「銀さん…どうして」
銀時は木刀をだるそうにぷらぷらとさせた。
胸からごそごそと出したのは白い紙。
「これ、お前の先輩方からの依頼状」
宛名には妙とおりょうの文字。
「お前が捜査にも関わらず、一生懸命働く姿に胸打たれたんだってさ。依頼料はお前持ちな」
そう言ってにやりと笑った。
(お妙さん…おりょうさん…私ただの出来損ないですよ…)
先輩達の優しさに、胸が熱くなる。
目頭が熱くなるのを感じ、振り払うように頭を振った。
そこに鳴り響くサイレンの音と、続々と現れる黒い影。
その影達に男は取り押さえられた。
車から降りてきた煙草を蒸す男はAに近づき、頭を殴る。
「い゛っっっっっ」
「お前、帰る時は連絡しろっつっただろうが。このクソ天パに先越されたろうが」
「連絡しようとした時に、あの男が現れて」
「知るか。こいつに手柄横取りされんのが俺は嫌なんだよ」
「何それ理不尽すぎません?!」
Aのその返しにむかついたようで、土方はもう一度頭に拳をぶつけた。
銀時は楽しそうに、笑みを浮かべていた。
.
.
「お世話になりました」
「まだここにいてくれていいのに…」
「いえ。私は百華に戻らないと」
お妙達に惜しまれながらも別れを告げる。
「お妙さん、おりょうさん。色々ご迷惑をお掛けしました。銀さんに依頼してただなんて。…私、もう何て言っていいのか」
泣きそうになる顔を見られまいと、俯く。
それに反するように、おりょうはAの顔を上げた。
「私達はAちゃんの頑張りが嬉しかっただけよ」
(坂本さんが求婚するように、やっぱり素敵な人だ)
おりょうの優しい笑みと言葉に、敵対心を覚えていた自分自身が馬鹿馬鹿しくなる。
「おりょうさん。貴方にはかなわないですね」
周りがぎょっとするのも気にせずに、Aはおりょうの頬に軽く口付けをした。
.
54人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nattu(プロフ) - connyさん» connyサン!再度コメントありがとうございます。嬉しいです^^いつの間にか4作目で、私自身いつ終わるんだろこれ…状態なので何シーズン続くか未定です笑 これからも温かく見守っていただけると幸いです* 長きに渡るこの作品を読んで下さり誠にありがとうございます (2021年3月3日 12時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - シリーズ4個目…本当にすごいです…!続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月25日 21時