２ ページ46
「……聞いていいだろうか」
「どうぞ」
「……ヒソカも、あなたのことをイタチと呼ぶか？」
「呼ぶね」
Aは素直に肯定した。
「では、ヌメーレ湿原で、ヒソカと共にいた……？」
「いたよ。……ああ、そういう」
納得がいったAは頷いた。
よく覚えていないが、おおかた試験官ごっこのときにヒソカが呼んだのだろう。あのとき彼女は姿を消していたが。
「そうだよ。あのとき、一部の受験生を殺したのはわたし」
「……ヒソカは、『あげるよ』と言っていた」
クラピカの声が僅かに震えている。そこに幾分かの怒りを読み取ってAは目を細めた。
「キルアの姉であるあなたにとって、人の命とは、そんな風にやり取りできるものなのか？」
「わたしがゾルディックの長女であることと、殺人鬼であることは関係ないよ」
言外に、Aは己を殺人鬼と肯定した。仮にも三日四日旅路を共にする相手なのだ、嘘をついても仕方がない。
「キルアも、ミルキも、当主のシルバも、ゼノ老も、好き好んで人を殺すわけじゃない。あのイルミだってそうだよ。殺人にためらいがないだけで、目的や依頼もなく人なんて殺さない」
クラピカだって、人殺し自体をとやかく言うつもりではないだろう。クラピカにしてみれば、きっとAの行いが命を弄んでいるように見えるのだ。
「彼らは暗殺者なんだ。だから、ゾルディック全部がわたしのようだと思わないでほしいな。わたしだけ異常なの」
「……」
「安心……できないかもしれないけど、安心してよ」
Aは曖昧な笑みを浮かべた。
「わたしは無差別殺人鬼じゃない。殺さない相手は選ぶよ。きみたち三人は殺さない相手だ。キルアの友達だからね」
「……」
しばらくクラピカは黙りこんでいたが、やがて失礼する、と言って踵を返した。
「うーん……」
苦笑を漏らして、Aは草地の上に倒れこんだ。
久しぶりの帰省なのはいいが、旅の連れの一人にああ思われていては、ちょっと快適な道行とはいかないかもしれない。
≪ハンター試験編・了≫
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海野(プロフ) - sakuさん» そのとおりですね。指摘ありがとうございます、記述を訂正しました。 (2019年4月9日 8時) (
レス) id: 542ac62a81 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - すみません。ページ12で『白日の詐欺師』にも隠は効くっていうの、そもそもの能力発動条件をクリア出来てないんじゃないでしょうか？纏以外使えないという条件でしたよね？間違ってたらすみません！ (2019年4月7日 12時) (レス) id: 7af2b9ccfb (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - sakuさん» コメントありがとうございます。心外ピエロの作者と個人的に交流があるのですが、sakuさんがどちらにもコメントをくださっていてびっくりだねという話をちょうどしておりました。いいですよね。続編も続けられるよう頑張ります！ (2019年2月3日 8時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - 心外ピエロ私もよんでるんですが…いいですよね！あと、更新お疲れ様です。相変わらずとても面白かったです。 (2019年2月2日 22時) (レス) id: ee214ae639 (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - 操菜 荘椏さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年2月2日 19時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海野 | 作成日時：2019年1月16日 13時
