【H×H】ゾルディック家長女（偽）の道行

兄弟喧嘩 ページ41

第三試合、ハンゾー VS ポックル。
ハンゾーの勝利。

第四試合、クラピカ VS ヒソカ。
クラピカの勝利。

第五試合、ヒソカ VS ボドロ。
ヒソカの勝利。

第六試合、キルア VS ポックル。
ポックルの勝利。

第七試合、レオリオ VS ボドロ。
延期。

第八試合、キルア VS ギタラクル――

試合開始直後、ギタラクルが久しぶりだね、とのたまった。

怪訝な顔をするキルアの目の前で自分に刺さった針を引っこ抜く。
ばきばきうぞうぞぐにゃぐにゃ、中に芯材の入った粘土をこねくり回すような奇っ怪な芸術ショーが開幕。

周りの人間はもちろん、変身シーンを初めて見たAも全力で引いた。

ぱさり、と黒く変じた長髪が落ちる。
艶やかで癖のない、みどりの黒髪。Aはあの色も存外に好きだ。

「や」

平坦な瞳でキルアを見下ろした、

「兄……貴……！」

可愛げはないが強くて頼もしい方の弟。
本名をイルミ＝ゾルディックという。

「母さんと次男(ミルキ)を刺したんだって？」
「まあね」

そうなのか。

「母さん泣いてたよ。感動してた。あのコが立派に育ってくれて嬉しいってさ」

……なんというか、そう。
ゾルディックの母は血族よりイカれた感性を持っている部分があったりする。うん。

ハンターになりたいわけじゃない、とキルアは警戒の面持ちで言った。安心したよ、とイルミは言った。
これで安心して忠告できる、と。

「お前にハンターは向かないよ」

誰も何も言わなかった。

「お前の天職は殺し屋なんだから」

Aは静かに、落としていた腰を上げた。

「お前は熱を持たない闇人形だ。自身は何も欲しがらず何も望まない」
「イルミ」
「陰を糧に動くお前が唯一歓びを抱くのは、人の死に触れたとき」
「――イルミ」

それは呪いだ。年端もいかぬ、まだ未来の定まらない少年を縛る鎖だ。

「お前はオレと親父にそう育て(つく)られた。そんなお前が、何を求めてハンターになると？」
「――イルミ！！」

そう造られたのは、そう在るのは、そう生きるのは、――それが苦でないのは、キルアではない。

返事はおびただしい数の針だった。

避けて、弾いて、捌き切れない分は口で受け止めて噛み砕く。

「――やめなさいイルミ！！」
「お前に何の権利があるわけ」

弟はこちらを見ない。二人とも、見ない。

「ゾルディック(きみたち)はそんなんじゃない！」
「部外者は黙ってろ」
「……――、」

Aは息を吸ったまま、それきり何も言えなかった。

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