【H×H】ゾルディック家長女（偽）の道行

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歯を剥き出して、全身でAは笑った。

ヒソカの指がトランプを挟む。目が悪ければ突然カードが現れたように見えるだろう。彼女の視力はただとても素早く取り出しただけなことを捉えている。

トランプに頼られてはこちらから攻撃ができない。Aは間髪入れず再ダッシュ。おそらくヒソカの策の内だろうが、そんなことには構わない。

嵌まってやろう。踊ってやるのもいい。烈しいステップがその舞台を壊す。

≪伸縮自在の愛(バンジーガム)≫を纏ったトランプが十枚投擲される。七枚は明後日の方向へ、二枚を身体を捻って回避、最後の一枚を左手の指で挟んでキャッチ。ガムが発動する前に放り捨てる。

三種類フェイントを挟んで右フック、足払い、左の貫手、肘、右掌底の連打。
ヒソカはガード、回避、捌いて、ガード、ガード。滑らかに後退しながら合間にトランプを投げる。

全てのトランプがオーラを纏う。全て念がヒソカから離れているから、不意討ちのためではないのは明白だ――が。

ヒソカは円を描くように退がり続ける。明らかに誘われている。それでもいい、とAは攻撃の手を緩めない。

――不意に。

視界の下端を、鮮やかなピンクがよぎった。

「っ……！」

踏み出した足の、そのちょうど真下に≪伸縮自在の愛(バンジーガム)≫。咄嗟に着地点をずらしたが身体が泳ぐ。胴体が一刹那だけがら空きになる。
この戦いで刹那は永遠に等しい。

畜生、ガムの吐き捨ては犯罪です。

ヒソカの踏み込み、強烈な右ストレート。空いた左手で急所を庇う、それだけ見れば流麗な道場拳法。

Aは――≪白日の詐欺師(ディアー・フィアー&ティアー)≫で隠しながら、大きく口を開けた(ヽヽヽヽヽ)。

「――♥」

見えないものをどうやって察知したか、なんとヒソカは拳を止めた。
その腕がガードに移るまで――それもまた、刹那。

体勢を立て直したAの拳が、雷光の速さでその胸を打ち抜いた。

ヒソカは吹き飛ぶ――あるいは、自分から跳ぶ。とんで、宙返りして着地。ここで二人の距離は初めと同じにまで戻った。

Aはその無防備な滞空時間を狙わない。
狙えなかった。

駆けるべき床はピンクの斑。
今までに投擲された全てのトランプが、≪伸縮自在の愛(バンジーガム)≫を纏ったまま床に貼り付いている。

トランプの攻撃はブラフか。Aの武器は機動力、確かに封じにかかるのが最適解。

ヒソカが前傾した上体を起こした。

４→←２

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